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第31回先端技術大賞 東大大学院・佐野氏、NECなど表彰

(2017/7/24 東京・元赤坂 明治記念館)

授賞式で井原巧経済産業政務官(中央右)から賞状を授与されるNECの先崎健太氏ら=24日、東京都港区の明治記念館

優れた研究成果を挙げた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者を表彰する「第31回 独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・フジサンケイビジネスアイ、後援・文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、産経新聞社、ニッポン放送)の授賞式が24日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。

式典では、東京大学大学院の佐野航季さんに学生部門のグランプリに相当する「文部科学大臣賞」が、「映像鮮明化技術の研究開発」に取り組んだNEC(日本電気)には、社会人部門の最高賞「経済産業大臣賞」がそれぞれ贈られた。このほか、医療技術や半導体関連技術など8件の研究も顕彰した。

審査委員長を務めた科学技術振興機構特別顧問の阿部博之・東北大名誉教授は「特定の学問分野に当てはめることができない複合的かつ高水準の研究が数多く見られた。学生部門では非常に高度な内容の研究が目立ち、社会人部門ではすでに私たちの生活に浸透している情報技術や製品の研究開発、医療・バイオ関連の技術が多かった」と講評した。

その上で、「科学技術は未来への夢を与えてくれるだけでなく、世界が抱える問題の解決にとって、その発展は必要不可欠。科学技術者を志す、とくに若い研究者の皆さんが世界を舞台にさらに活躍することを祈念する」と述べた。

■高円宮妃久子さまのお言葉

高円宮妃久子さま

本日、「第31回 独創性を拓く 先端技術大賞」の授賞式にあたり、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。このたび、受賞された皆さま、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

昨今、科学技術分野の研究・開発の重要性が改めて見直され、独創的な研究開発の必要性に一段と注目が集まっておりますが、日本の先端技術の研究開発は、世界的にも高く評価されております。今回も、若い研究者の斬新な発想と、力強い信念、熱い心を強く感じました。

科学技術がめざましい進歩を続ける現代において、既成の概念にとらわれることなく、多角的な側面から、果敢にチャレンジしていく柔軟な頭脳、独創性あふれる思考能力には感心するばかりです。また、過去の研究の成果を生かし、社会において役立つ製品をさまざまなかたちで実現化された研究者・開発者の創意工夫にも心より敬意を表します。

近年、多くの自然災害が日本を襲ってまいりました。今年になってからもいくつかの災害に見舞われ、特に先日の九州においての記録的豪雨で多くの方が命を落とされました。命を落とされた方のご冥福を祈り、また各地で被災されている方に、1日でも早い平穏な日常が戻ってくることを心より祈っております。

先端技術の研究開発は、私たちの安全や健康、衛生など日常的な暮らしを根本から支えています。そして、刻一刻と変化する世界情勢に瞬時、的確に対応し、わが国を守り、明るい将来を築いていくためにも、一見、目立たない地道な研究開発の積み重ねに、大いに投資していく必要があります。

科学技術がめざましく進歩し続ける現代において、先端技術の研究開発過程で得られたデータは、まさに人類の財産、知的資源であり、その質の高さは技術立国日本の国力ともいえます。戦後、私たちは安全で豊かに暮らす幸せを当たり前のことと考え、平和な時代を享受してきました。しかし、国と国の関係、国交とは力関係であり、それに基づいての友好関係です。平和は努力を怠れば、そこにとどまってくれるものではありません。国民の平穏を守るには、独創的な科学技術分野の研究開発が必要になってまいります。

科学技術の力を持って多くを変えることができますが、それが故に、それを実用するときの人間の資質が問われます。家庭や教育の現場、そして社会において、将来を背負ってたつ若者を、しっかりとした理念を持つ人間に育てていく責任があります。ここにご出席の皆さまには、将来を担う人材の育成とともに、そのような若者を育てる土壌としての国づくりに力を尽くしていただきたいと思います。

科学技術分野では解明を待つ研究領域がまだ数多くあり、科学技術の果たす役割は今後ますます大きくなってまいります。本日は、科学技術の素晴らしさに改めて思いを致す機会をいただき、ありがとうございました。皆さまの研究がさらに充実、発展していくことを心より願い、また今後のご活躍を祈念して式典に寄せる言葉といたします。


高円宮妃久子さまを囲み、記念写真に納まる先端技術大賞の受賞者。前列左端は審査委員長を務めた阿部博之氏=24日、東京都港区の明治記念館

受賞励み、新たな飛躍誓う

レセプションで文部科学大臣賞を受賞した東京大学大学院の佐野航季氏から研究の説明を受ける高円宮妃久子さま=24日、東京都港区の明治記念館

この日の授賞式では、東京大学の上田泰己教授が「全身・全脳透明化の先に見えるもの」と題して記念講演し、自身が手がけたマウスの透明化技術について紹介した。理化学研究所から東大に移ったとき、今回フジテレビジョン賞を受賞した東大大学院の久保田晋平さんから「脳だけでなく、さまざまな臓器にも使うのが良いのでは」と助言されたのをきっかけに、この技術を応用したところ、マウス全身の透明化に成功したエピソードを披露。「人との出会いが新たな先端技術を拓(ひら)く」と述べ、現場でのオープンイノベーションの重要性を強調した。

授賞式に続いて開かれたレセプションには約200人が出席。会場には研究成果を紹介したパネルが飾られ、高円宮妃久子さまは受賞者の説明に熱心に耳を傾けられた。

経済産業大臣賞を受賞したNECの先崎健太さんは、暗い場所などで撮影された不鮮明な映像を分かりやすくする技術を説明した。今夏は集中豪雨による被害が相次いでいるため、久子さまからは「遭難者の救助に役立つのではないでしょうか」と声をかけられた。

文部科学大臣賞を受賞した東大大学院の佐野航季さんは、鳥や魚などによく見られ、光の反射を利用する構造色の応用研究に取り組んでいる。久子さまも興味を持たれている分野で、「ものすごく可能性がありますよね」との言葉をかけられた。他の受賞者にも「将来はどういった分野に今回の技術が役立ちそうですか」などと積極的に質問されていた。

受賞を励みとして、新たな飛躍を誓う声も相次いだ。産経新聞社賞を受賞した清水建設は、ヨーグルトの蓋を参考に高品質のコンクリート表面を実現する型枠を開発した。こうした例を踏まえ、同社の辻埜真人さんは「異業種と連携しながらオープンイノベーションを進め、いろいろな技術を呼び込んで開発を加速させていきたい」と意欲を示した。

NECの先崎さんは「補正技術の開発と、その成果を実社会に還元することに力を入れていきたい」と強調。特別賞を受賞したレンゴーの花谷俊和さんは「実用化に向けた研究開発活動に力を入れていきたい」と話していた。



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