第37回先端技術大賞授賞式で学生部門の文部科学大臣賞を受賞した東京大学大学院の高田真悟さん(左)=23日午前、東京・元赤坂の明治記念館(斉藤佳憲撮影)
優れた研究成果をあげた理工系の学生や企業の若手研究者らを表彰する第37回「独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・産経新聞社、後援・文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、ニッポン放送、特別協力・アカリク)の授賞式が23日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。
式典では、物質中の磁気の流れ「スピン流」を高い効率で電流に変換できる技術の研究に取り組んだ東京大大学院博士課程3年の高田真悟さんに、学生部門の最高賞「文部科学大臣賞」が贈られた。
機能を分割した半導体チップを組み合わせる技術「チップレット集積」で、低コスト化を可能とするチップの接合技術を開発した横浜国立大の井上史大准教授らに、社会人部門の最高賞「経済産業大臣賞」が贈られた。
このほか6件の研究が顕彰された。
審査委員長の阿部博之・東北大名誉教授は講評で「競争が熾烈になっている分野で果敢に新技術を確立しようとする研究や、当たり前のように捉えていた事象に対する斬新な視点など、独創性にあふれる論文が多く寄せられた」と評価した。
第37回先端技術大賞の授賞式でお言葉を述べられる高円宮妃久子さま=23日午前、東京・元赤坂の明治記念館(斉藤佳憲撮影)
本日、「第37回 独創性を拓く 先端技術大賞」の授賞式にあたり、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。はじめに、各賞を受賞されました皆さまに、心からお祝いを申し上げます。おめでとうございます。
先端技術分野の研究・開発は、素材などの基礎研究から、その技術を生かした用途開発にいたるまで幅広く、産業応用では電子分野、量子技術、人工知能、通信ネットワークなどへの裾野が広がり、医療分野では治療や医療機器、薬品開発へとつながり、私たちの暮らしと健康を支えています。
そして、日本においてのこれらの研究・開発レベルは、常に高い水準を維持しており、世界的に評価されていることを、とても喜ばしいと思っております。
そのような中、今回も学生および社会人の若い研究者の皆さんが、柔軟で斬新な着想と、それを具現化しようとする力強い信念と情熱をもって、素晴らしい成果を出しておられます。
学生部門では、電子分野での素材、素子の研究・開発の多様化が見られ、高効率、省電力をキーワードに、電子デバイスや量子技術などの分野で新たな可能性を拓く論文が目立ちました。
社会人部門では、実用化に向けた研究・開発の受賞が多く、マイクロ接合の応用技術や、生体認証の高精度化、医療分野の評価試験の新技術、データサイエンスでプロセスの効率化と透明性を高める新システムなど、社会課題の解決につながる産業応用の進歩が顕著でした。
勇気をもって、試行錯誤をくり返し、ねばり強く研究・開発に取り組む精神は尊く、新たな技術を生み出す先見性と、それを発展させる応用力の高さには感心させられます。改めまして、先端技術の各分野で力を尽くしてこられた皆さまに深く敬意を表する次第です。
科学技術立国として、安心、安全、健康といった人々の暮らしの基本を守る技術が、日本から世界へ広がり、多くの分野、領域に恩恵をもたらすことを願ってやみません。
本日、ここにご出席の皆さまには、将来を担う研究・開発の重要性を、人材育成を通じて未来へと継承し、気高い精神で歩む人と心を涵養(かんよう)していただくよう、心よりお願い申し上げます。
皆さまの研究・開発がさらに大きな高みへと発展していくことを心より願い、今後のご活躍を祈念いたしまして、式典に寄せる言葉といたします。本日は誠におめでとうございます。
高円宮妃久子さまを囲み、記念撮影する第37回先端技術大賞の受賞者ら=23日午前、東京・元赤坂の明治記念館(斉藤佳憲撮影)
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