受賞者紹介

受賞者紹介

第30回地球環境大賞 受賞者

地球環境大賞

積水ハウス株式会社

「5本の樹」計画の植栽1709万本を使い、“生物多様性保全の実効性”を評価

経済産業大臣賞

九州電力株式会社九州電力送配電株式会社

「再生可能エネルギー」、「生物多様性の保全」など幅広い活動実績

環境大臣賞

兼松サステック株式会社

間伐材を含む国産木材を用いた地盤補強工法「環境パイル工法」の推進

文部科学大臣賞

青森県立名久井農業高等学校

開発途上国の持続可能な農業を支援する“環境システム科環境研究班”の取組

国土交通大臣賞

積水化学工業株式会社

「サステナブルなまち」づくりプロジェクトを始動~設計・開発・運営まで、自社でトータルに対応~

農林水産大臣賞

静岡市森林環境アドプト実行委員会

人工林を整備し、二酸化炭素の吸収機能や災害防止機能等の向上を図る

日本経済団体連合会会長賞

東レ株式会社

「炭化水素系電解質膜」を開発し、グリーン水素のコスト低減に貢献

フジサンケイグループ賞

旭化成株式会社

クラウド型生鮮品物流ソリューション「Fresh Logi™」システムを開発

奨励賞

イオン株式会社

脱炭素社会・循環型社会に寄与するライフスタイル確立へ向けて
「Loop」、「グラムビューティークリサイクルプログラム」を開始

奨励賞

東芝三菱電機産業システム株式会社

地球環境負荷低減とレジリエントな社会の実現へ貢献

第30回地球環境大賞 受賞内容

大賞

積水ハウス株式会社 

「5本の樹」計画の植栽1709万本を使い、“生物多様性保全の実効性”を評価

同社は国内最大規模の住宅メーカーであり、住宅の庭等に年間100万本に及ぶ樹木を植栽している造園会社でもある。2001年から始めた造園緑化事業「5本の樹」計画は、一般的な造園で用いられる園芸品種や外来樹種ではなく、地域の生き物が生息できる在来樹種を中心とした植栽事業である。小さな点である庭が集まり、街の中で連続し、里山、地域の自然へとつながる都市部の「生態系ネットワーク」を形成し、生態系保全に貢献する取り組みである。

今般、琉球大学との共同で、これまでに植栽した累積1709万本(2020年までの実績)による“生物多様性保全効果の実効性”について検証した。具体的には、それらの樹種・本数・位置データと生態系に関するビッグデータを用いて、日本で初めて定量化し、マクロ(日本全体)視点で検証した。例えば、樹種数増加の生物多様性基盤への影響、鳥・蝶類の種類をどれだけ呼び込む効果があるか、などだ。「都市部の生物多様性保全活動の効果」を確認するための、有効な評価手法となった。

経済産業大臣賞

九州電力株式会社・九州電力送配電株式会社

「再生可能エネルギー」、「生物多様性の保全」など幅広い活動実績

同社は2020年度も、幅広い環境活動を行なった。主な実績5つを紹介する。

①「再生可能エネルギーの積極的な開発」:宮崎県の塚原発電所(水力)、大分県の大岳(おおたけ)発電所(地熱)を更新し、事業を再開した。九州最大の風力発電所、宮崎県の串間風力発電所が稼働。北九州響灘(ひびきなだ)地区等での洋上風力発電の事業化を検討した。/②「再生可能エネルギーの受け入れ」:再生可能エネルギーを最大限接続できるように、コネクト&マネージの導入やVPP(バーチャルパワープラント)の実証実験に取り組んだ。電力需給バランスでのEV活用の可能性を検証する中で、電気バス、定置型蓄電池やヒートポンプ給湯器等、多様なリソースを制御する実証実験を行った。/③「EVの活用・普及促進」:九州電力送配電株式会社と2030 年度までに社有車のEV100%化に取り組んでいる。マンション入居者のための電気自動車を活用したカーシェアリングサービス「weev(ウィーブ)」の提供を開始した。/④「海外における持続可能な社会づくりへの貢献」:地熱技術サービスを提供する米国サーモケム社を買収し、海外での案件開発・運営体制を強化。/⑤「生物多様性の保全」:地域の人と取り組む生物多様性の保全などの取組み「こらぼらQでんeco」を九州全域で展開。環境・エネルギー教育では「Qでん★みらいスクール」をオンライン等で実施した。

環境大臣賞

兼松サステック株式会社

間伐材を含む国産木材を用いた地盤補強工法「環境パイル工法」の推進

同社は地盤補強で地球温暖化防止及び林業の活性化を目指している。同社の「環境パイル工法」は住宅建設時の地盤補強に間伐材を含む国産木材(人工林)を使用した「環境パイル材」で家を支える工法である。住宅1棟あたりで、従来工法のセメントや鉄を使わないため、約8tのCO2削減効果がある。加えて、使用する国産木材のCO2吸収量が2tあり、CO2削減効果は合計約10tになる。同社は、同工法で持続可能な開発目標達成に向けて積極的に取り組むことを宣言。年間10万tのCO2削減を目指している。

同工法は100年以上前の東京駅舎建設にも使われていた伝統工法である。東京駅舎では当時、1万本もの松杭が使用されたが、今も健全なままであった。同社が現在使っている環境パイル材も高品質な防腐防蟻処理で高い耐久性を備えている。現在、1000万ha超もの国内人工林が利用期に来ており、その間伐材を有効利用することで、国内林業界が活性化になる。加えて、森林環境の健全性維持にもつながる。

文部科学大臣賞

青森県立名久井(なくい)農業高等学校

開発途上国の持続可能な農業を支援する“環境システム科環境研究班”の取組

同高校の「環境システム科」は、農業と工業を融合させて学ぶ全国でも極めてユニークな学科である。同科に2015年に誕生した「環境研究班」は、開発途上国の持続可能な農業を支援するため、「緑育心:緑は心を育てる」を合言葉に、環境技術の開発と普及活動等に取り組んでいる。主な内容は、開発途上国での水質汚染と食糧不足を解決するための、「食用植物による水質浄化」、「泡農薬による水質汚染の抑制研究」、さらに乾燥地・半乾燥地における農業用水の確保と土壌流出を抑制する「多機能集水システムの開発」へと発展している。これらの活動は、国内外から高く評価され、様々な賞を受賞している。また、SDGsや高校生によるESD(持続可能な開発のための教育)の理念に基づく活動である。

国土交通大臣賞

積水化学工業株式会社

「サステナブルなまち」づくりプロジェクトを始動~設計・開発・運営まで、自社でトータルに対応~

同社は、SDGs達成・社会課題の解決に向けて、グループ内の環境貢献技術を結集したまちづくりプロジェクトを始動した。その第一弾として、2015年に閉鎖した同社の工場跡地を利用して、地下インフラを含めた課題解決型の「サステナブルなまち」(「あさかリードタウン」=埼玉県朝霞市)を開発。環境問題(全戸が「エネルギー自給自足型」の省エネ住宅等)への対策、自然災害へのレジリエンス強化(豪雨時の雨水貯留&排水で浸水被害を抑制等)をはじめ、少子高齢化や地域過疎化に伴う社会問題へも対応している。さらに、同社でまちの運営まで自社で行う。タウンコンセプト(安心・快適・便利でサステナブルなまち)に基づいた統合的なタウンマネジメントと、住民の声を取り入れてまちをアップデートする仕組みにより、開発時のコンセプトの維持・向上を推進していく。同社は、このサステナブルなまちづくりを日本全国へ展開し、環境貢献・社会貢献を全国規模で拡大していく考えである。

農林水産大臣賞

静岡市森林環境アドプト実行委員会

人工林を整備し、二酸化炭素の吸収機能や災害防止機能等の向上を図る

森林のうち約4割が人工林だが、所有者の高齢化や後継者不足で、中には一度も間伐等の整備がされていない未整備林も多く存在する。静岡市内の場合、人工林は44%、その86%が標準伐採齢を占めている。そこで、市内3森林組合、静岡県地球温暖化防止センター、静岡市で「静岡市森林環境アドプト実行委員会」を2011年に設立。企業団体、森林所有者と3者協定を結び、森林の恩恵を受ける企業からの寄付金を基に、静岡市内で手が行き届いていない森林を適切に整備し、森林の二酸化炭素の吸収機能や災害防止機能等の向上を図ると同時に、林業全体の活性化を目指すことにした。

2020年は、井川(いかわ)地区の森林を9.24ha整備した。2011年から2020年の10年間では107.45haの森林を整備した。この間、吸収した二酸化炭素量は3139.3t-CO2で、これは約700世帯分が出す二酸化炭素量を吸収したことに相当する。切り出した間伐材は、こども園等へ配布する積み木の製作等に活用。また、協力企業には寄付額に応じて各企業の二酸化炭素吸収量(累計)が示された二酸化炭素吸収証書を製作し、配布している。協賛企業・団体は55社、寄付総額は4020万1963円にのぼる。

日本経済団体連合会会長賞

東レ株式会社

「炭化水素系電解質膜」を開発し、グリーン水素のコスト低減に貢献

同社は、再生可能エネルギー等由来の電力を用いて、水の電気分解からグリーン水素を製造し、大規模発電等の電力用途のみならず、熱・輸送燃料・産業用途でも活用するセクターカップリングにより、脱炭素・カーボンニュートラルな社会の実現や地球環境の課題解決に貢献するビジョンを掲げている。

そのためのキーは水の電気分解から製造したグリーン水素であると考えた同社は、高分子電解質膜(PEM)の両側に電圧を加えて水を分解するPEM型水電解装置の高性能化を狙って、「炭化水素系(HC)電解質膜」を開発した。高い水素イオン伝導性を備えるほか、ガスが透過しにくいため高効率で水素を製造でき、燃料電池の高出力化、電気化学式水素圧縮機や水電解装置の高性能化などに貢献できる。

すでに山梨県などで実証実験等を進め成果を上げつつあるが、関係8者共同でのグリーンイノベーション基金事業(2021年8月採択)を活用し、国内最大級の大規模PEM型水電解装置の社会実装と工場の熱需要の脱炭素化を進めていく。

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フジサンケイグループ賞

旭化成株式会社

クラウド型生鮮品物流ソリューション「Fresh Logi™」システムを開発

青果物の鮮度を保持しつつ、輸送中の消費エネルギーと温室効果ガス排出量を削減するクラウド型生鮮品物流ソリューション「Fresh Logi™」システムを開発、提供している。フードロス削減、GHG排出量削減、物流の課題解決(低積載率・人手不足・運転時間規制・モーダルシフト等)、トレーサビリティの見える化による食の安全・安心の強化、青果物の鮮度向上による付加価値向上―等の効果が予想される。

通常の冷蔵トラック輸送でも扉の開閉等で輸送中温度の最適化は難しいのが実情。その上、冷蔵ユニットには電力が必要で、その重さで車の燃費も悪くなる。新開発の「高断熱性密閉ボックス」は常温・混載輸送ができ、冷蔵トラックと同等以上の鮮度保持が可能だ。またボックス内の環境(青果物の輸送・保管温度・ 湿度・ガス組成など)をセンシングして輸送・保管環境を可視化し、クラウド化で得られた輸送・保管環境データから輸送環境の見える化、鮮度予測や最適在庫管理を実現できるシステム。特にモーダルシフト可能な長距離輸送に効果がある。例えば九州地区から関東地区への青果物輸送におけるC02排出削減量は最大約38%の評価を第三者機関から得た。

奨励賞

イオン株式会社

脱炭素社会・循環型社会に寄与するライフスタイル確立へ向けて
「Loop」、「グラムビューティークリサイクルプログラム」を開始

地域の資源循環拠点として貢献してきた同社店舗を脱炭素社会・循環型社会に寄与するライフスタイル確立へのチャレンジの場とするべく活動の一つとして、2021年5月から「Loop(ループ)」を、同6月から「グラムビューティーク リサイクルプログラム」を始めた。2020年9月策定の「イオンプラスチック利用方針」推進の一環だ。

Loopは、繰返し利用可能な商品パッケージを開発するループ・ジャパン合同会社および商品メーカー、購入・容器返却を行う顧客、商品販売と容器回収の場であるイオンの3者で構成される。2021年10月15日現在でメーカー7社・16品目、イオン等30店舗で展開。イオンは顧客認知や利用店舗拡大を進めつつ、メーカーへ働きかけている。

グラムビューティークは、イオンリテール株式会社の運営する美と健康と日用品の専門店。グラムビューティークリサイクルプログラムは同社、容器回収・リサイクルのテラサイクル・ジャパン合同会社、化粧品・日用品メーカー4社(コーセー、資生堂、日本ロレアル、P&G)との協働で、イオン等87店舗内の売り場にて化粧品関連容器を回収し、ペレットとしてリサイクルする活動である

奨励賞

東芝三菱電機産業システム株式会社

地球環境負荷低減とレジリエントな社会の実現へ貢献

同社は、製造業や環境・エネルギー市場における「産業システムインテグレータ」として「“かけがえのない地球”」を健全な状態で次世代に引き継いでいくこと」を基本認識として、環境負荷低減に貢献する製品・システムの提供に取り組んでいる。

成果例としては、IE4効率(国際規格最上位のスーパープレミアム効率)の誘導モータを開発した。石油化学プラント等で使われる高速回転コンプレッサの大容量(モーター)ドライブシステムを開発し、従来のタービン利用から“電化”を実現。大容量太陽光発電システムや蓄電システム用として、新型パワーコンディショナを開発。世界最高クラス99.1%の変換効率に加え、世界最大クラスの単機容量(5.5MW)を実現した。

同社は2020年、カーボンニュートラル実現に貢献するトータルソリューションの提供を目指す専任組織「ERS(Energy Resource Solutions)プロジェクト」を発足。温室効果ガス排出量を対2013年度比で46%減という政府目標の実現に向け、様々なエネルギーソリューションの検討を進めている。