日本バイオベンチャー大賞 サンバイオなどに贈賞
高円宮妃久子さまをお迎えして行われた贈賞式。
サンバイオの川西徹会長(左)に大賞が贈られた
優れたバイオベンチャー企業を表彰する第10回「日本バイオベンチャー大賞」(フジサンケイビジネスアイ主催)の贈賞式が1日、高円宮妃久子さまをお迎えし、神戸市中央区の甲南大で開かれた。
同大賞はバイオ産業の振興を目的に2001年に創設。今回、グランプリにあたる大賞には、ドナーから採取した細胞を分化・加工・培養して、脳梗塞などの患者に投与し治療する「再生細胞薬」を手掛ける「サンバイオ」(東京都中央区)が輝いた。
このほか、皮膚に貼って薬物を投与する「マイクロニードル」の量産化などに取り組む「コスメディ製薬」(京都市南区)が「フジサンケイビジネスアイ賞」を受賞。アミノ酸を配合した機能性食品などを手掛ける「SBIファーマ」(東京都港区)が「経済産業大臣賞」に、極小サイズのミセル化ナノ粒子を用いた抗がん剤の実用化に取り組む「ナノキャリア」(千葉県柏市)が「バイオインダストリー協会会長賞」にそれぞれ選ばれた。
受賞者を代表し、サンバイオの川西徹会長が「この16年間は苦難の連続で存続の危機を迎えたこともあった。当社の製品による治療で自力で立ち上がれるようになった人や、結婚して子供ができた患者もいる。日本のバイオ産業が世界を牽引する存在まで飛躍できるように貢献したい」と述べた。
高円宮妃久子さまのお言葉
本日、第10回「日本バイオベンチャー大賞」の贈賞式に迎えられ、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。この度は受賞された皆さま、まことにおめでとうございます。独創的な研究開発にチャレンジし、大きな成果を出されたことにお祝いを申し上げますとともに心から敬意を表したいと思います。
バイオテクノロジーの分野では昨年10月、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されました。まことに喜ばしいことです。
大隅教授は、細胞の中で不要になったタンパク質の分解と再利用を促す「オートファジー」と呼ばれる仕組みを解明されました。この研究は、生命科学の根源的な発見とされ、がんやパーキンソン病など難病の予防や治療に役立つ可能性を秘めています。
そのような画期的な研究成果が日本で生まれ、世界に認められたことは国民の大きな誇りであり、特にバイオ分野の研究者にとっては大きな励みになることです。また日本人が3年連続でノーベル医学・生理学賞を受賞したことは、日本のバイオテクノロジーのレベルの高さを改めて証明したことといえるのではないでしょうか。
21世紀は生命体が持つさまざまなメカニズムの研究が一気に進み、バイオテクノロジーは医療・健康分野はもとより、環境保全やモノづくりの現場にいたるまで広範囲な分野で活用されると考えられています。バイオテクノロジーは国民の生活を守り、より豊かにするのに不可欠な技術です。
本日はバイオテクノロジーの持つ将来性や可能性に大きな期待を寄せる機会となりました。人間が知識と知恵を駆使し、軸となる理念をしっかりともって創意工夫をすれば、可能となってくるものが多くあります。
受賞された皆さまをはじめ、大学・研究機関、バイオ産業に従事される方には、多くの期待の目が向けられています。皆さまの研究が今後もさらに充実し、発展していくことを願い式典に寄せる言葉といたします。
高円宮妃久子さま、甲南大ご視察や受賞者とご懇談
高円宮妃久子さまとともに記念撮影をする受賞者ら
1日に開催された第10回「日本バイオベンチャー大賞」の贈賞式ご臨席のため、会場の甲南大学(神戸市中央区)に到着した高円宮妃久子さまは、同大フロンティアサイエンス学部の藤井敏司学部長らの案内で同学部の施設を視察された。同学部では生物学と化学を融合したナノバイオテクノロジーの研究が行われている。この日は、がんや再生医療を専攻する研究者2人が研究内容を紹介し、久子さまは熱心に質問されていた。
続いて開かれた懇親パーティーでは、神戸市の久元喜造市長が「今回の受賞を契機として研究開発の地平を切り開くとともに、各企業の発展につながることを祈念する」と述べた。池森啓雄・近畿経済産業局長は「バイオベンチャーはリスクのある研究から成り立ち、それが成功するかどうかは素人には分からない。発展のためにはさらなる応援が必要だ」と述べた。
このあと久子さまは、受賞企業の関係者らから事業内容について説明を受けられるなどし、歓談の輪が広がった。