ヒューマン・メタボローム、大賞に飛躍誓う
高円宮妃久子さまをお迎えし行われた贈賞式。
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの
菅野隆二社長(左)に大賞が贈られた
優れたバイオベンチャー企業を表彰し、バイオ産業の振興を目指す第9回「日本バイオベンチャー大賞」(主催・フジサンケイビジネスアイ)の贈賞式が27日、高円宮妃久子さまをお迎えし、大阪府吹田市の関西大学で開かれた。
グランプリに当たる「大賞」には、動植物が自ら作り出すアミノ酸や糖などのメタボローム解析や特定の疾患を客観的に評価するバイオマーカーを開発する慶応大発ベンチャーのヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが輝いた。
また「経済産業大臣賞」はiHeart Japan、「文部科学大臣賞」はクオンタムバイオシステムズが獲得した。
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの菅野隆二社長は「受賞企業には世界で戦えるユニークな技術があり、日本の活性化に大きく貢献できる。受賞を弾みに事業化を加速する」と語った。
高円宮妃久子さまのお言葉
第9回日本バイオベンチャー大賞 贈賞式
贈賞式でお言葉を述べられる高円宮妃久子さま
本日、第9回「日本バイオベンチャー大賞」の贈賞式が盛大に開催され、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。各賞を受賞された皆さまには、心よりお祝い申し上げますとともに、独創的な研究開発に積極的に挑まれた努力に敬意を表します。
生命体のメカニズムを細胞や遺伝子レベルで解明するバイオテクノロジーはここ数年、飛躍的に進歩しました。なかでも、日本が世界をリードしているiPS細胞の研究では、医療分野で実用に向けての取り組みが本格化してまいりました。
昨年、神戸の病院では目の難病を対象にした臨床研究で、iPS細胞から作った細胞を移植する手術が世界で初めて行われ、大きな注目を集めました。また今朝の産経新聞では、iPS細胞から軟骨を作ることに京大で成功したと発表されておりました。わが国において、多くの方に希望を与える研究成果を出していることをとてもうれしく思います。
いま、多くの研究機関や企業でバイオテクノロジーを使った医療、創薬の研究が加速しており、これまで治癒をあきらめていたさまざまな疾病が根治される可能性も出てきました。
バイオテクノロジーは医療分野だけで活用されるものではありません。農業や新エネルギー、環境改善など広範囲な分野で有用な技術であり、すべての人が健康で豊かな暮らしを営むためのキーテクノロジーでもあります。
20年前、ここ関西は阪神・淡路大震災に見舞われ、多くの方々が被災し、肉体的・精神的な苦痛を受けられています。その後も各地で大きな自然災害が多発していますが、バイオテクノロジーはこうした災害時の苦痛を和らげ、取り去ることにも役立つでしょう。
またバイオの力で作物の収穫量が飛躍的に増えることになれば、地球上から飢餓をなくすことも夢ではなくなります。人間が知識と知恵を駆使し、軸となる理念をしっかりと持って創意工夫をすれば、可能となってくるものが多くあります。
先ほど(関西大学の)キャンパスを少し見せて頂き、とても興味深い、わくわくするような研究成果のご説明を受けました。いきいきと研究を進めている学生の方たちの姿をみて大変心強く思いました。
今回受賞された皆さまの独創的な研究やテクノロジーが、今後ますます進化し、社会に貢献していくことを心から願い、式典に寄せる言葉といたします。
久子さま 関西大ご視察や受賞者とご懇談
高円宮妃久子さまとともに記念撮影に納まる受賞者ら
2月27日に開催された第9回「日本バイオベンチャー大賞」の贈賞式へのご臨席のため、会場の関西大学(大阪府吹田市)に到着された高円宮妃久子さまは、関西大学の楠見晴重学長の案内で同大学化学生命工学部を視察された。
化学生命工学部では、食材に添加すれば冷凍時の品質劣化が防げる「不凍タンパク質」の研究を進める河原秀久教授や、リチウムイオン電池について研究する石川正司教授の研究室をご覧になられた。
関西大学100周年記念会館ホールで開催された贈賞式には約300人が参加した。
審査委員長の新名惇彦・奈良先端科学技術大学院大学名誉教授の審査講評に続いて、グランプリに当たる大賞を受賞したヒューマン・メタボローム・テクノロジーズをはじめ、経済産業大臣賞のiHeart Japan、文部科学大臣賞のクオンタムバイオシステムズ、バイオインダストリー協会会長賞のユーグレナ、日本ベンチャー学会賞のノーベルファーマ、大学発バイオベンチャー協会賞のリボミック、フジサンケイビジネスアイ賞のアキュセラ・インク、奨励賞のライトニックスにそれぞれ表彰状が授与された。
久子さまは贈賞式を温かく見守られた。
贈賞式に続き、同大学内で開かれた懇親パーティーでは、受賞各企業が紹介された後、近畿経済産業局の関総一郎局長が「日本には健康、環境などの分野でさまざまな課題があるが、受賞企業の技術がより多くの人に幸せを届けることを祈っている」とあいさつ。
懇親パーティーには、吹田市の井上哲也市長や、吹田商工会議所の寺西重博会頭、関西大学の池内啓三理事長らも参加した。
久子さまは受賞企業8社の関係者から、研究内容などについて詳しい説明を受けられるなど、会場内では受賞者や参加した関西大学の学生らの歓談の輪が広がった。