地球環境大賞 |
環境問題に貢献する「DNP 多機能断熱ボックス」の開発 |
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経済産業大臣賞 |
循環型社会の構築へ「キヤノンエコテクノパーク」を開設 |
文部科学大臣賞 |
廃棄ウニを利用した農業用有機発酵液の開発・事業化 |
国土交通大臣賞 |
「エネルギー自給自足型」住宅の開発・普及 |
農林水産大臣賞 |
森林資源を利用した「高濃度フルボ酸」による環境改善技術 |
日本経済団体連合会会長賞 |
「脱炭素化」 に向けた「エネルギー自立建築」への取り組み |
フジサンケイグループ賞 |
ペットボトルの「ダイレクトリサイクル(FtoP)技術」の開発 |
奨励賞 |
風力発電などクリーンエネルギー供給への積極的な取り組み |
※環境大臣賞は今回、該当なしとしました。
環境問題に貢献する「DNP 多機能断熱ボックス」の開発
同社は印刷事業で培ってきたコーティング技術などを進化発展させ、光や熱、液体、気体、電子などを制御する「高機能フィルム」を実現。ガス透過性の低いハイバリアフィルムでグラスウールなどの芯材を密封した真空断熱パネルをボックス形状にした「DNP多機能断熱ボックス」を開発した。非常に高い断熱性能を有し、輸送時に低温物の温度を常温環境下で長時間維持する、いわば「魔法瓶」のような働きをするのが特徴。しかも折りたためて繰り返し使用できるため、輸送用梱包としてさまざまな利点がある。ドライアイスの使用量やワンウェイ資材の削減による温室効果ガス排出量の削減や、冷蔵コンテナもしくは航空輸送から常温コンテナによる海上輸送への切り替えが可能。一貫して定温・冷蔵・冷凍で流通することができるためコールドチェーンの確保ができ、フードロス低減に貢献する。これら高機能フィルムがもたらす付加価値は経済発展と地球環境の保全を両立させ、持続可能な社会の実現に大きく寄与する。
循環型社会の構築へ「キヤノンエコテクノパーク」を開設
同社は2018年2月、環境活動の総本山とすべく茨城県坂東市に「キヤノンエコテクノパーク」を開設。回収した製品から新たな製品を作る「製品 to 製品」の取り組みをはじめ、プラスチックのクローズドリサイクルを完全自動で行う装置を稼働させた。従来のリサイクル現場のイメージを覆す「クリーン&サイレント」を実現する一方、ショールーム機能も備えて子どもたちに資源循環の重要性、困難さを体験しながら学習する場としても活用している。今後、エコテクノパークを中心にさらなるリサイクル技術の高度化・効率化を追求、グローバルでの循環型社会構築に貢献することを目指していく。
廃棄ウニを利用した農業用有機発酵液の開発・事業化
廃棄ウニから有機発酵液を作成する方法を開発した。地域の海で繁殖しているウニは魚の棲家となる海藻を荒らす一方、食用にもできないため、地元の漁協から相談を受け、ウニの有効利用方法を検討した。具体的には、廃棄ウニを糖蜜と海草粉末で嫌気性発酵させた有機発酵液を作成。これを減化学肥料栽培で使用することで、土壌改良や農作物の収量や糖度の改善に成功した。糖度はハクサイで18%、パパイヤメロンで25%高まり、収量はイネで7%増えた。海の環境改善、農業への活用という漁業と農業が連携した持続可能な環境活動となった。
「エネルギー自給自足型」住宅の開発・普及
同社の「スマートハイム」シリーズはHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)や家庭用蓄電池など先進機器を積極的に採用してきた。将来的にはDR(デマンドレスポンス)やVPP(ヴァーチャル・パワー・プラント)への参加が可能なエネルギー調整力を持った「自給自足型住宅」が必要と判断し、2017年に発売した「スマートパワーステーション100% Edition」シリーズはエネルギーの100%自給自足を実現した。今後は既存住宅や集合住宅などへの適用範囲を拡大し、地球温暖化防止や循環型社会の実現に寄与していく。
森林資源を利用した「高濃度フルボ酸」による環境改善技術
防災対策を専門とする同社は1985年、21世紀に向けたビジョンとして「土と水と緑の技術で、世界人類に貢献する」を掲げた。同社の特許技術によって、廃棄物であった間伐材や松葉から高い純度と濃度を持った「フルボ酸」を抽出、製造でき、様々な自然再生事業に利用することが可能となった。生成されたフルボ酸(液体)は植物活性剤、土壌改良剤として、腐植(フューミン+フルボ酸、個体)は農地等の土壌改良材等に利用できる。すでにフルボ酸は津波被害地の除塩や公園や小学校などの芝生緑化で、腐植は農家で稲の倒伏率低下やホウレンソウの成長率向上などで活用され、成果が確認されている。また中国やパラグアイなど海外でも活用されている。この他、同社の技術で松原の保全や松葉を利用したフルボ酸のシャンプーの開発にも成功している。
「脱炭素化」 に向けた 「エネルギー自立建築」への取り組み
同社は国際企業イニシアティブ組織である「EP100」(エネルギー効率2倍)と「RE100」(再生可能エネルギー利用100%)に、建設・住宅業界の企業として世界で初めて加盟。18年3月には日本初となる太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせた電力自立システムを導入した「大和ハウス佐賀ビル」での実証実験を開始した。同社はネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の先を見据えた「エネルギー自立建築」として、同ビルの効果検証を進め、その成果を同社施設へ水平展開するとともに、顧客に対する環境配慮型施設の提案・普及・加速に生かしていく。
ペットボトルの「ダイレクトリサイクル(FtoP)技術」の開発
同社は2011年、国内で初めて回収されたペットボトルを次のペットボトルの製造原料に使う「ボトル to ボトル(B to B)メカニカルリサイクルシステム技術」を構築したが、今回は回収したペットボトルを粉砕したフレークから直接プリフォーム(PF=ペットボトルを膨らませる前の段階)を成型する技術の開発に成功した。これにより、従来あった工程(ペレット化、結晶化、ペレット輸送、成型前のペレット乾燥)が不要となり、従来のB to B技術と比べて約25%のCO2排出量削減効果が見込まれる。すでにPFの品質安定性評価を終え、18年8月から商業生産を開始した。
風力発電などクリーンエネルギー供給への積極的な取り組み
同社は社会を支えるエネルギーを取り扱う企業として、消費者にクリーンなエネルギーを供給するために、事業活動とCSR活動の両面で地球環境保全に積極的に取り組んでいる。事業活動では風力発電(発電能力を現在の23万キロワットから2022年度までに40万キロワット、24年度に現在の倍増)を強化、CSR活動では「クリーン・キャンペーン」(FM放送と連携した山や海の清掃活動、01年から17年までで670 回実施、参加者数25万2394人)、「エコカード基金」(02年設置、カード会員と同社グループの寄付金で国内外の森林保全活動や農業支援等を行う)などを展開している。