「第23回地球環境大賞」を受賞し、日枝久・フジサンケイグループ代表(右)からトロフィーを授与された友野宏・日本鉄鋼連盟会長=10日、東京・元赤坂の明治記念館
産業の発展と地球環境との共生を目指し、温暖化の防止や環境保全活動に熱心に取り組む企業や団体を表彰する第23回「地球環境大賞」(主催・フジサンケイグループ)の授賞式が10日午後、秋篠宮ご夫妻をお迎えして、東京・元赤坂の明治記念館で開かれ、各賞受賞者に表彰状とトロフィーが手渡された。
式典では、製鉄所の生産工程で排出される二酸化炭素(CO2)の評価方法を世界で初めて国際標準化したことで大賞に輝いた、日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金副会長)が「世界規模でのCO2削減を実現するため真剣に議論した過程で生まれたアイデアを実現した。世界の鉄鋼業をリードしたことに光を当てていただいて大変ありがたい」と述べ、今回の受賞を励みにして業界が一致団結し、温暖化防止に向けてさらなる努力を行うとの姿勢を示した。
また、フジサンケイグループの日枝久代表は「世界的に深刻な大気汚染と温暖化問題はさまざまな影響を及ぼしており、私たち一人一人が英知を結集しなければならない。今後も地球環境大賞を通じて豊かで活力にあふれた国づくりに邁進(まいしん)する」とあいさつした。
地球環境大賞顕彰制度委員長を務めるキヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は「美しい地球を次代へバトンタッチすることがわれわれの大きな責務」と強調した。
授賞式後のレセプションには産業界を中心に官界、学界などから約500人が出席。受賞者を祝福する一方で交流の輪が広がった。
授賞式でお言葉を述べられる秋篠宮殿下=10日、東京・元赤坂の明治記念館
本日、「第23回地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とお会いできましたことを、大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。
近年、地球温暖化の防止や生物多様性の保全など、環境諸問題に対する人々の関心や意識は大変高まってきております。一方、豪雨や大雪、土砂災害など、人々の生活に大きな影響を及ぼす自然災害、そして深刻な大気汚染問題なども数多く発生しております。このようなことから、地球環境に関わる問題を考えるとき、その保全とともに、災害についての意識を一層高めつつ、人類が自然と共存していく必要性を強く感じます。緑豊かな水の惑星といわれるこの地球に、多くの貴重な生命を末永く育んでいくことができるよう、環境問題の解決に積極的に取り組んでいくことが大切といえましょう。
地球環境大賞は、平成4年に創設され、地球環境と共存する産業の発展と持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品やそのための技術の開発、ならびに地球環境に対する社会の意識向上や自然環境保全の活動を促進し、これらを通じて社会に貢献することを目的としております。
今年で23回を数える本賞は、産業界に始まり、自治体、学校、そして市民グループへと表彰対象を広げながら、環境活動に熱心に取り組む人々の姿勢を顕彰するとともに、意識を高めることに貢献してまいりました。
今後とも、日本の優れた技術や知識が地球環境の保全に貢献していくことは、誠に大切なことと考えます。
終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも率先して取り組みを進めていかれることを期待するとともに、その活動が一層の広がりを見せることを祈念し、私のあいさつといたします。
本日は、栄えある第23回地球環境大賞を拝受致し、大変光栄に存じます。
エネルギー多消費産業の鉄鋼業にとって、鉄を作る過程で不可避的に発生する二酸化炭素(CO2)を抑制することは、石油危機以来の最重要課題であり、たゆまぬ省エネを推進してきた結果、大幅な削減を達成し、今や世界最高水準の省エネ効率を実現しております。
しかし、単にわが国の鉄鋼業だけが、CO2を減らしても、地球規模の課題である気候変動問題の真の解決にはなりません。
このため、中国やインドなどの新興工業国において、CO2が飛躍的に増加する中で、世界的規模の削減を実現するために、日本の鉄鋼業が貢献できる方策を真剣に議論して参りました。国際標準化は、その過程で生まれたアイデアを実現したものです。その意義ですが、製鉄所が世界のどこにあろうとも、また、生産プロセスに差があろうとも各製鉄所のCO2の排出効率の実力を世界共通の尺度で客観的に評価できるようにしたことです。
エネルギー効率が劣る発展途上国の製鉄所について、この手法を使って計測し、課題を抽出すると共に、世界最先端の私どもの省エネ技術を導入することによって、CO2の大幅な削減につなげることが可能になると確信しております。
今回の受賞を大きな励みとして、日本鉄鋼連盟並びに会員各社と致しましては、地球温暖化防止のために、一段の努力を続けて参る決意であります。
初夏を思わせるような強い日差しがふりそそぐ中、東京・元赤坂の明治記念館で行われた第23回「地球環境大賞」の授賞式。会場には受賞企業・団体のトップをはじめ、産学官から多くの関係者が駆けつけ、受賞を祝うとともに、あちこちで歓談の輪が広がった。
■地球環境大賞
友野宏・日本鉄鋼連盟会長(新日鉄住金副会長) 今回の受賞は、各国の製鉄所の二酸化炭素(CO2)排出量について、世界共通の尺度で簡便に評価できる方法を日本鉄鋼業が世界で初めて国際標準化したもの です。このため、どこに製鉄所があっても、同じ土俵でエネルギー効率を測定し、CO2の削減目標や対策を検討することができます。栄えある大賞を頂戴した ことを大きな励みとして、今後とも世界最高の省エネルギーに関する技術と管理手法を提供しながら地球温暖化防止に貢献してまいります。
■経済産業大臣賞
田中稔三・キヤノン副社長CFO(最高財務責任者) ライフサイクルアセスメントを活用した製品開発におけるCO2削減活動を高くご評価いただき、誠に光栄に存じます。今回の受賞を励みに、弊社の環境ビジョン「豊かさと地球環境が両立する社会の実現」のもと、持続的発展可能な社会の構築に貢献してまいります。
■環境大臣賞
金坂良一・カネパッケージ社長 当社は2009年から、マングローブ植林を毎年100万本実施してきました。当初は、社内で大反対にあいましたが、当社のような小さな会社でも、地球環境改善に一歩踏み出すことによって、このような栄誉ある賞を頂き誠に光栄に存じます。これからも、Think Global,Act Localを実践して行きたいと思います。
■文部科学大臣賞
高谷正・青森県立名久井農業高校校長 高校生が地域と連携して取り組むサクラソウ保護や環境浄化ボランティアなど幅広い環境活動を高く評価していただき、誠に光栄に存じます。今回の受賞を励みとして、今後も自然を教材とした心豊かな人間の育成に努めてまいります。
■国土交通大臣賞
宮本洋一・清水建設社長 資材・エネルギーの地産地消によるZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)の実現という、先進的な取り組みを高く評価いただき光栄に存じます。今回の受賞を励みとし、今後も環境を機軸とした事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。
■農林水産大臣賞
江夏順行・霧島酒造社長 この度の受賞、誠に有難うございます。今回、当社のゼロ・エミッションへの取り組みが高く評価され大変、光栄に思います。この種のメタクレス技術、施設としては、業界一を自負しております。今後も環境共生型企業、伝統醸造産業として、栄進、飛躍、邁進していきたい所存であります。
■日本経済団体連合会会長賞
山田義仁・オムロン社長 生産現場を基点とした当社の省エネ改善活動を高くご評価いただき光栄に存じます。本受賞を励みに、培った技術とノウハウを省エネ支援・環境対策機器の開発・商品化に活かし、"未来のものづくり"への環境貢献に取り組んでまいります。
■フジサンケイグループ賞
樋口武男・大和ハウス工業会長兼CEO(最高経営責任者) エネルギー"ゼロ"の住宅・建築・街づくりの取り組みを高く評価いただき、大変光栄に存じます。今後も、さまざまな施設で環境配慮型技術を追求するとともに、その技術をお客さまへより広く提案し、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
本日、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、また多くのご関係の皆さまのご出席のもと、第23回「地球環境大賞」の授賞式を行わせていただき、心から感謝申し上げます。
東日本大震災から3年がたち、被災地では今も多くの方々がさまざまな困難を乗り越えながら復興に向けて懸命に努力されております。そのような中、わが国では環境問題やエネルギー問題の解決は喫緊の課題であり、低炭素社会の実現や、持続可能な社会の構築が何より重要となっております。また、世界的に深刻な大気汚染と温暖化は、地球上に住む私たちにさまざまな影響をもたらしており、これら人類共通の課題に対し、私たち一人一人が英知を結集しなければなりません。
私どもフジサンケイグループが「産業の発展と地球環境との共生」を基本理念に、1992年に発足させたこの地球環境大賞は、今年で第23回を迎えることができました。秋篠宮同妃両殿下には当初から一貫してご臨席を賜り、また、WWFジャパンをはじめ関係各方面の皆様のご協力、ご支援をうけて、日本を代表する環境顕彰制度として広く社会に定着してまいりました。
フジサンケイグループは、社会の持続的発展のために、地球環境大賞を通じて、あらゆる分野で「環境と経済」「環境と社会」の調和による豊かで活力にあふれた国づくりに今後とも邁進(まいしん)してまいる所存であります。
皆さま方のなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、ごあいさつとさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、第23回「地球環境大賞」の授賞式が開催できましたことを、心から感謝申し上げます。そして、本日、受賞される皆様に心よりお祝い申し上げます。
さて、東日本大震災の発生から3年余りがたちますが、被災地では一日も早い復旧・復興の実現に向け、いまも多くの方々が懸命に作業を続けております。この間にも、日本では多くの自然災害が発生し、そのたびに被災した人々の生活に深刻な影響が出ています。
あらためて申し上げるまでもなく、環境問題の解決は人類共通の課題ともなっており、社会の持続的発展には、地球環境の安定が何より重要であります。美しい地球を次代の人たちにバトンタッチすることが、われわれの大きな責務であると考えております。
この地球環境大賞は、20年以上の長きにわたり関係者の皆さま方のご尽力、ご努力により、権威と影響力のある顕彰制度として、高い評価と支持を得ております。顕彰制度委員会委員長として、本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、努めてまいる所存でございます。今後ともより一層のご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私からのごあいさつとさせていただきます。
今回は全国の企業や団体、地方自治体、学校などから合計107件の応募が寄せられました。審査を通して感じましたのは、環境問題の解決に向けて他のモデルになりうる優れた取り組みが多かったことです。
特に、企業においては、省エネやリサイクルといった活動に加え、顧客、消費者、従業員など、さまざまなステークホルダーを巻き込んだ、より広範な活動が着実に広がっており、一企業・団体の枠を超えたこうした取り組みが今後さらに拡大していくことを実感いたしました。
さて、今回表彰する8組の活動内容は、いずれも「地球環境大賞」の理念にふさわしい優れた成果をあげており、審査にあたっては大変苦労いたしましたが、製鉄所の二酸化炭素(CO2)排出効率評価手法を世界で初めて国際標準化した一般社団法人日本鉄鋼連盟に最高位の「大賞」を授与することにいたしました。日本の高度な省エネ技術がISO規格として採用され、温暖化防止に貢献することを示したもので、このことを高く評価いたしました。
環境のフロントランナーともいえる企業や団体の素晴らしい取り組みが社会の裾野に広がってこそ、地球環境大賞の意義が一段と高まるものと確信しております。
レセプション会場では、地球環境大賞に特別協力しているWWFジャパンの徳川恒孝会長に、産経新聞社の清原武彦会長から寄付目録が手渡された。
あいさつに立った徳川会長は「私は審査員も務めているが、これがものすごく難しい。受賞した(企業や団体)以外でもぜひ賞をあげたい参加者がたくさんいる。あと20〜30賞があると大変助かる」と述べ、出席者を笑わせた。
また、「大企業だけでなく、小さな企業や学校、学生がどんどん応募して、内容も努力している。草の根まで環境問題への熱意が育っている。ますますこの賞が大きくなり、いろんな方を勇気づけられれば」と述べた。
授賞式後のレセプションには、秋篠宮ご夫妻もご臨席。産業界を中心に官界、学界などからは約500人が出席し、受賞者を祝った=10日、東京・元赤坂の明治記念館
第23回「地球環境大賞」では、会場となった明治記念館の中庭に受賞者が集まり、秋篠宮ご夫妻に環境技術などをアピールした。また、授賞式後のレセプションでも、受賞者に加えて経済界などから多数の関係者が出席。秋篠宮ご夫妻を囲む形で輪が広がった。
日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金副会長)によると、秋篠宮殿下は新日鉄住金の君津製鉄所を見学されたこともあり、「世界標準を作られたことは素晴らしい」とのお言葉があったという。
清水建設の宮本洋一社長は、受賞理由である森の中のオフィスをはじめとした環境問題への取り組みを説明した。秋篠宮殿下は、八ケ岳山麓という地域特性を生かして自然エネルギーを最大限活用している点などに興味を抱かれた様子だったという。
カネパッケージの金坂良一社長は、海外でのマングローブ植林と、独自技術の梱包(こんぽう)材について紹介した。「殿下は植林の専門的なことにお詳しく、妃殿下は当社の技術についてよくご存じで、共に熱心に質問された」と話し「今後も毎年100万本の植林に取り組む」と改めて誓った。
青森県立名久井農業高校の高谷正校長は、秋篠宮殿下から「さまざまな活動に取り組まれていますね」とのお言葉をいただいたという。同校園芸科学科3年の葛形小雪さんは「サクラソウの原生地での人工授粉に挑む」と新たな目標を見つけた。
キヤノンは、設計プロセスなどに環境指標を入れたことで、社員一人一人のモチベーションが高まり、成果が上がってきたと報告した。秋篠宮殿下からは「『一人一人がきちっと意識をし、実行すれば大きな力になりますね』というお話をいただいた」(古田清人・環境統括センター所長)という。
芋焼酎「黒霧島」ブランドで有名な霧島酒造は、焼酎粕をガス化して工場の蒸気ボイラー熱源として利用しており、江夏順行社長は「焼酎粕はすごいエネルギー。南九州の大地のソーラーシステム」とアピールした。
第18回で大賞を受賞した大和ハウス工業の樋口武男会長兼最高経営責任者(CEO)は、エネルギー"ゼロ"の住宅、建築、街づくりを核にしたその後の環境対策を説明。秋篠宮殿下は、キーワード「ア(安全・安心)・ス(スピード、ストック)・フ(福祉)・カ(環境)・ケ(健康)・ツ(通信)・ノ(農業)」に興味を抱かれたという。
また、今回の受賞を機に環境対策をさらに強化したいとの声も相次いだ。
オムロンの山田義仁社長は「当社は少ないエネルギーによって、QCD(品質・コスト・納期)を自社工場で実現した。これが日本の製造業に広まっていけば再び世界をリードできるのではないか。製造業の中の省エネというものをパッケージ化してグローバルに展開したい」と語った。