第24回「地球環境大賞」を受賞し、フジサンケイグループの日枝久代表(右)からトロフィーを授与されるトヨタ自動車の内山田竹志会長=9日、東京・元赤坂の明治記念館
産業の発展と地球環境との共生を目指し、温暖化の防止や環境保全活動に取り組む企業や団体を表彰する第24回「地球環境大賞」(主催・フジサンケイグループ)の授賞式が9日午後、秋篠宮ご夫妻をお迎えして、東京・元赤坂の明治記念館で開かれ、各賞受賞者に表彰状とトロフィーが手渡された。
式典では、世界初の量産型燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の開発で大賞に輝いたトヨタ自動車の内山田竹志会長が「開発エンジニアは『次の100年のために』を合言葉にして、これからを担う子供たちが憧れてくれる車にしたいという思いを込め、ミライをつくった」と述べ、本格的な水素社会の到来にはトヨタだけでなく関係者の協力が不可欠だと強調した。
また、フジサンケイグループの日枝久代表は「地球規模での環境・エネルギー問題の解決には、企業や自治体が果たす役割が一段と大きくなっている。地球環境大賞を通じ、あらゆる分野での環境と経済・社会との調和によって、豊かで活力にあふれた国づくりに邁進(まいしん)する」とあいさつした。
地球環境大賞顕彰制度委員長を務めるキヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は「制度の社会的評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるように努める」と語った。
授賞式後のレセプションには産業界を中心に官界、学界などから約500人が出席。受賞者を祝福するとともに交流の輪が広がった。
4月とは思えぬような寒さを記録した前日までの荒天から一転し、春の日差しが降りそそいだ9日。東京・元赤坂の明治記念館で行われた第24回「地球環境大賞」の授賞式には、受賞企業・団体のトップをはじめ、産学官から多くの関係者が駆けつけ、環境問題の解決、持続可能な社会の実現に向け決意を新たにした。
授賞式前に庭園で記念撮影をする前列左から湊秋作・アニマルパスウェイ研究会会長、植木義晴・日本航空社長、村田紀敏・セブン&アイ・ホールディングス社長、池田育嗣・住友ゴム工業社長、岸上克彦・カルピス社長、辻慎吾・森ビル社長、熊城逸子・山陽女子中学校・高等学校前校長、雜賀慶二・東洋ライス社長、 阿部晃一・東レ副社長CTO、内山田竹志・トヨタ自動車会長=9日、東京・元赤坂の明治記念館
■大賞
内山田竹志・トヨタ自動車会長 世界初の量産型燃料電池車「MIRAI」の開発・販売を高くご評価いただき、誠に光栄に存じます。「MIRAI」は、エネルギー多様化、走行中のCO2排出ゼロなどさまざまな環境対応はもちろん、ワクワク、ドキドキ楽しんで走っていただけるクルマを目指して開発いたしました。今回の受賞を励みとし、今後も産業の発展と地球環境との共生に向けた取り組みを進めてまいります。
■経済産業大臣賞
阿部晃一・東レ副社長CTO(最高技術責任者) 当社は素材の力で地球環境問題の解決に貢献する事業拡大プロジェクトを進めています。今回その一つである砂漠・荒廃地を緑化・農地化するロールプランター・システムを高くご評価いただいたことに感謝申し上げます。受賞を励みに、さらにプロジェクトを推進してまいります。
■環境大臣賞
雜賀慶二・東洋ライス社長 「技術を創造して、社会に高度の貢献をする」との社是により開発した無洗米によって、環境浄化に寄与したとして、このたび栄誉ある賞を受け、光栄に存ずるとともに、一層社会に貢献を目指す所存であります。
■文部科学大臣賞
熊城逸子・山陽女子中学校・高等学校前校長 中学生・高校生が取り組む海底ごみ問題の解決のための回収活動と啓発活動など幅広い環境活動を高く評価していただき、誠に光栄です。今後も地域と自然環境の懸け橋となれる生徒の育成に努めてまいります。
■国土交通大臣賞
辻慎吾・森ビル社長 都市はあらゆる活動の舞台です。これからも、「都市を創り、都市を育む」という森ビルらしい仕事を通じて、都市緑化、生物多様性、省エネ・低炭素化、資源循環など、地球環境に優しく持続可能な都市の実現を目指します。
■農林水産大臣賞
岸上克彦・カルピス社長 堆肥化促進材「サーベリックス」による循環型農業プロセスの開発を高くご評価いただき、誠に光栄です。長年培った微生物活用技術をベースに、環境貢献型商品・サービスの提供を通して持続可能な社会の構築に貢献していく所存です。
■日本経済団体連合会会長賞
池田育嗣・住友ゴム工業社長 石油などの化石資源を一切使用しない当社独自の100%石油外天然資源タイヤ「エナセーブ100」を高くご評価いただき光栄に存じます。本受賞を励みに、今後も高い技術力・開発力で持続可能な社会の実現に、より一層貢献してまいります。
■フジサンケイグループ賞
村田紀敏・セブン&アイ・ホールディングス社長 環境に配慮した間伐包装材料等を使ったプライベートブランド(PB、自主企画)商品開発の取り組みを高くご評価いただき、誠に光栄に存じます。今回の受賞を励みに、今後も価値ある環境配慮型商品の展開を積極的に推進してまいります。
■審査委員特別賞
植木義晴・日本航空社長 航空機による大気観測「CONTRAILプロジェクト」を高く評価いただき、プロジェクトの一員として、大変光栄に存じます。今後も、本業である航空運送事業を通じてプロジェクトに貢献するとともに、地球温暖化メカニズムの解明という大きな課題に、メンバーの皆さまと力を合わせて取り組んでまいります。
■審査委員特別賞
湊秋作・アニマルパスウェイ研究会会長 名誉ある賞を頂戴し大変光栄です。私たちが便利に利用している道路等で分断されている森林に棲む樹上性野生動物のためのアニマルパスウェイの普及に弾みがつきます。問題意識をもつ皆さんと連携し活動して参ります。
授賞式でお言葉を述べられる秋篠宮殿下=9日、東京・元赤坂の明治記念館
本日、「第24回地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とお会いできましたことを大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。
近年、気候変動や生物多様性の保全を始めとする環境諸問題についての人々の意識は非常に高くなっております。
そして気候変動とも関係すると考えられる局地的大雨や台風、そして土砂災害など地域に多大な被害をもたらす事例も増え、災害の視点からの環境を考える機会も多くなってまいりました。
本年は3月に仙台市において第3回国連防災世界会議が開催されましたが、その中で気候変動と防災に関することが話し合われ、また森林やサンゴ礁をはじめとする生態系保全の強化が、人類に環境と気候の回復力の基盤を与えていることなどが紹介されたと聞き及んでおります。
このように私たちが地球環境を考えるとき、その保全とともに災害についての意識を高めつつ、人が自然と共存していくことの重要性を強く感じます。その上でこの緑豊かな水の惑星に多くの貴重な生命を末永く育んでいくことができるよう、環境問題への対処に積極的に取り組んでいくことが大切であるといえましょう。
平成4年に創設された「地球環境大賞」は、地球環境と共存する産業の発展、持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品、そのための技術の開発、地球環境に対する社会の意識向上、ならびに自然環境の保全を通じて社会への貢献を図ることを目的としております。
今年で24回を数えるこの賞は、産業界にはじまり、自治体、学校、そして市民活動へと表彰対象を広げながら、環境活動に熱心に取り組む人々の姿勢を広く顕彰し、環境に対する意識を高めることに貢献してきました。今後とも、日本の優れた技術や知識が地球環境の保全に貢献し、世界の発展に寄与していくことは、誠に大切なことと考えます。
終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がっていくことを願い、私の挨拶と致します。
本日、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、また多くのご関係の皆様にご出席いただく中、第24回「地球環境大賞」の授賞式を行わせていただきますことに、心から感謝申し上げます。
東日本大震災から4年がたちましたが、被災地では今なお、多くの方々が復興に向けて懸命な努力を続けられております。この間にも、日本では豪雨や豪雪、土砂災害など多くの自然災害がさまざまな地域に大きな被害をもたらし、被災した人々の生活に深刻な影響を及ぼしております。
わが国では環境問題やエネルギー問題の解決は喫緊の課題であり、低炭素社会の実現や持続可能な社会の構築が何より重要であります。また、世界的に深刻な大気汚染と温暖化は地球上に住む私たちに様々な影響をもたらしており、これら人類共通の課題に対し、私たち一人一人が叡智を結集しなければなりません。
そのような中、私どもフジサンケイグループが平成4年に創設した地球環境大賞顕彰制度は、「産業の発展と地球環境との共生」を基本理念としており、今年で第24回を迎えることができました。秋篠宮同妃両殿下には当初から一貫して授賞式にご臨席を賜り、また、WWFジャパンをはじめ関係各方面の皆様のご協力、ご支援をうけて、日本を代表する環境顕彰制度として広く社会に定着してまいりました。
社会の持続的発展のために必要な地球規模での環境・エネルギー問題の解決には、企業や自治体などが果たす役割が一段と重要になっており、フジサンケイグループは、この地球環境大賞を通じて、あらゆる分野で「環境と経済」、「環境と社会」の調和による豊かで活力にあふれた国づくりに今後とも邁進して参る所存であります。
皆様方のなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、第24回「地球環境大賞」の授賞式が開催できましたことを、心から感謝申し上げます。そして、本日、受賞される皆様に心よりお祝い申し上げます。
さて、地球規模の環境問題の解決に向け、日本の優れた技術や知識が、世界の発展に寄与し、環境に配慮した豊かな時代を築いていくことは、誠に大切なことであります。あらためて申し上げるまでもなく、環境問題の解決は人類共通の課題ともなっており、社会の持続的発展には、地球環境の安定が何より重要であります。美しい地球を次代の人たちにバトンタッチすることが、われわれの大きな責務であると考えております。
この地球環境大賞は、20年以上の長きにわたり関係者の皆様方のご尽力、ご努力により、権威と影響力のある顕彰制度として、高い評価と支持を得ております。産業界をはじめ各界・各層の、地道で、たゆみない環境活動の励みとなり、より良き社会や新たな時代の創造に寄与してまいりましたことは、誠に喜ばしい限りでございます。
顕彰制度委員会委員長として、本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、努めてまいる所存でございます。今後ともより一層のご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私からのご挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと、栄えある「第24回地球環境大賞」を頂戴いたしまして、厚く御礼申し上げます。受賞者を代表いたしまして、ひと言、御礼のご挨拶を申し上げます。
今回、「地球環境大賞」を受賞いたしました『MIRAI』は、昨年12月15日に発売した量産型の燃料電池自動車で、将来の有力なエネルギーである水素を使って自らが発電して走り、走行中は「CO2を排出しない」という優れた環境性能をもっております。
燃料電池自動車の開発がスタートしたのは、1992年のことです。20年以上かかって、ようやくお客様にお届けすることができるところまでまいりました。開発を担当したエンジニアたちは「次の100年のために」を合言葉にクルマづくりを進めてまいりました。
我々から、開発陣にお願いをしたことは、ただ一つ。「楽しいクルマにしよう」。それだけでした。「エコカーだから」、「環境に優しいから」。それを売りにしたり、言い訳にするのではなく、「次の100年もクルマは楽しいぞ!」。お客様にそう思っていただけるクルマをつくりたい。これからを担う子供たちが憧れてくれるようなクルマをつくりたい。そんな思いを込めて、「MIRAI」と名付けました。
「水素社会」はもちろん、「未来のモビリティ社会」の実現に向けては、私たちトヨタだけで、できることは限られております。これから始まる長い道のりは、100年先の未来につづく、チャレンジングな道のりであり、皆様とともに、歩んでいく道のりだと思っております。多くの関係者の方々と、心をひとつに、力を合わせてまいりますので、引き続き、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
最後になりますが、この地球環境大賞を主催してこられましたフジサンケイグループをはじめ、特別協力のWWFジャパン、ご後援の皆様、同賞顕彰制度委員会および審査委員会の皆様、全ての関係者の皆様に御礼を申し上げますとともに、本日ご臨席の皆様の、ますますのご発展をお祈り申し上げます。この「地球環境大賞」が、日本を代表する環境顕彰制度として、ますますご発展されることを、心から祈念いたしまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。本日は、誠にありがとうございました。
今回は全国の企業や団体、地方自治体、学校などから合計102件の応募が寄せられました。審査を通じ、低炭素社会の実現、持続可能な循環型社会の構築に向けた環境問題への取り組みが、産業界をはじめ各界・各層で一段と高まっていることを、あらためて実感しました。とくに今回は、日本を代表する有力企業の環境活動や中小企業の真摯な取り組みが目を引き、環境問題の解決に向けて他のモデルになりうる優れた取り組みが多かったことも大変うれしく思いました。
今回表彰する10組の活動内容は、いずれも「地球環境大賞」の理念にふさわしい優れた成果をあげており、審査にあたっては大変苦労いたしましたが、世界初の量産型燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を開発・販売したトヨタ自動車に最高位の「大賞」を授与することにいたしました。水素社会の幕開けを象徴する究極のエコカーであり、関連特許をすべて無償で公開するという経営姿勢も高く評価いたしました。
環境のフロントランナーともいえるこうした企業や団体の素晴らしい取り組みが社会の裾野に広がってこそ、地球環境大賞の意義が一段と高まるものと確信しております。第24回を迎えた本顕彰制度が今後、ますます充実し、温暖化防止など地球環境の保全活動に取り組む産学官、市民グループの良き指針となり、持続可能な循環型社会の構築に寄与することを祈念いたします。
WWFジャパンの徳川恒孝会長(右)、産経新聞社の清原武彦会長
レセプション会場では、地球環境大賞に特別協力しているWWFジャパンの徳川恒孝会長に、産経新聞社の清原武彦会長から寄付目録が手渡された。
あいさつに立った徳川会長は「WWFはさまざまな場所で、自然保護に向けた大変な努力を続けている」と説明した。
とくに最近では、気候変動に伴うホッキョクグマの生態を把握するなど、いかに動物を守るかといった活動に力を入れているという。「これからも自然保護活動に一層邁進(まいしん)する所存です。ますますのご支援をお願いします」と訴えていた。
レセプションで互いの受賞を祝い乾杯する受賞者ら。なごやかな雰囲気の中で、環境談義に花を咲かせた。左から2人目はトヨタ自動車の内山田竹志会長=9日、東京・元赤坂の明治記念館
第24回「地球環境大賞」では、会場となった明治記念館の中庭に受賞者が集まり、秋篠宮ご夫妻に環境技術などをアピールした。また、授賞式後のレセプションでも、受賞者に加えて経済界などから多数の関係者が出席。秋篠宮ご夫妻を囲む形で輪が広がった。
トヨタ自動車の内山田竹志会長は燃料電池車「MIRAI(ミライ)」で会場入り。秋篠宮殿下とのご歓談では「日本は燃料電池車だけではなく、環境対応のさまざまな分野でリードしています」と説明した。同社の大賞受賞は今回で3回目。「世界で年間1000万台も販売しており、環境負荷を少なくするのがわれわれの大きな使命です」と気持ちを新たにしていた。
一方、秋篠宮殿下から「『地球環境に貢献する技術を世界に広げてほしい』と激励していただいた」と喜ぶのは東レの阿部晃一副社長。同社の炭素繊維はミライにも使用されており、「長期的な視野で関係企業と協力していくことが、50年先の国力を高める」と強調していた。
とぎ汁が一切出ない無洗米の生産で、ヘドロの排出量削減を実現した東洋ライスの雜賀慶二社長はコメのサンプルを用いながら、米ヌカを有機肥料などに活用する取り組みについて説明した。殿下からは「素晴らしいですね。頑張ってください」と激励され、さらなる取り組みの強化を誓っていた。
森ビルの辻慎吾社長は、緑化や生物多様性に配慮した街づくりの必要性について説明した。使用エネルギーの"見える化"によって電力を2割削減できる点に、秋篠宮殿下がとくにご関心を持たれた様子だった。
微生物資材「サーベリックス」による循環型農業プロセスを開発したカルピスは、殿下から高度な質問を受けた。岸上克彦社長は「『枯草菌(こそうきん)』という言葉を知っておられた。アカデミックな知識が豊富な方であることを再認識した」と語っていた。
パネルを駆使して説明したのは、世界初となる100%石油外天然資源タイヤを開発した住友ゴム工業。池田育嗣社長は「環境に対する思いがうまく伝えられた。大変光栄だった」と話す。
大気汚染を観測する「CONTRAILプロジェクトチーム」の関係者は、これまでの足跡を感慨深く振り返っていた。プロジェクトがスタートした1993年当時は、旅客機の貨物室に観測機器を置かず、座席をつぶして対応していたという。チームの代表を務める日本航空の植木義晴社長は「当時の経営者はよく認めたと思う。(この取り組みを)始めてくれた人にまず感謝したい」と話していた。