大賞を受賞した富士通の田中達也社長(左)に、フジサンケイグループの日枝久代表からトロフィーが手渡された=10日午後、東京・元赤坂の明治記念館(宮崎瑞穂撮影)
産業の発展と地球環境との共生を目指し、温暖化の防止や環境保全活動に取り組む企業・団体を表彰する第26回「地球環境大賞」(主催・フジサンケイグループ)の授賞式が10日、秋篠宮ご夫妻をお迎えして、東京・元赤坂の明治記念館で開かれ、各賞受賞者に表彰状とトロフィーが手渡された。
式典では、革新的な省エネ技術を活用した世界最小・最高効率のACアダプターの開発で、大賞に輝いた富士通の田中達也社長が「さまざまな電気製品に利用されることで、社会全体の大幅なエネルギー効率の改善に貢献すると確信している」と述べた。
また、フジサンケイグループの日枝久代表は「トランプ米大統領は、環境保護を優先する政策を大きく見直す方針を示しており、温暖化問題は方向性が見えにくくなっている。しかし、各国が合意した目標に向け着実に前進していくことが重要ではないか」とあいさつした。
地球環境大賞顕彰制度委員会委員長を務めるキヤノンの御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者は「今後も本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、努めていく」と述べた。
第26回「地球環境大賞」の授賞式では、会場となった明治記念館の中庭に受賞者が集まり、臨席された秋篠宮ご夫妻に自社の環境技術をアピールした。また、授賞式後のレセプションには産業界を中心に官界、学界などから約500人が出席し、歓談の輪が広がった。
受賞企業は実際の製品や、体験できるモデルなどを持参し説明するケースが多く、秋篠宮ご夫妻は熱心に質問されていた。眼鏡のような体験装置を使って、外光を取り込む採光フィルムの技術を説明した大日本印刷の北島義斉副社長は「理解していただけた様子だった」と話した。
また、レセプション会場では、地球環境大賞に特別協力する世界自然保護基金(WWF)ジャパンの徳川恒孝会長に、産経新聞社の太田英昭会長が寄付目録を手渡した。
授賞式の前に、庭園で記念撮影する前列右から田中達也・富士通社長、和田勇・積水ハウス会長兼CEO、大坪清・レンゴー会長兼社長、森明夫・香川県立多度津高校前校長、大野直竹・大和ハウス工業社長兼COO、北島義斉・大日本印刷副社長、溝内良輔・キリンホールディングス常務執行役員、中島鷹秀・アエラホーム社長、松木徳夫・アースライフネットワーク代表理事=10日、東京・元赤坂の明治記念館
穏やかな春の日となった10日、東京・元赤坂の明治記念館で行われた第26回「地球環境大賞」の授賞式。出席した企業・団体のトップ、産学官など多くの関係者らは温室効果ガスによる温暖化の防止と、経済成長の両立といった持続可能な社会の実現に向け決意を新たにしていた。
■大賞
田中達也・富士通社長 今回高く評価いただいたACアダプターは、革新的な省エネ材料として期待される窒化ガリウム(GaN)を活用し、当社のICT基盤技術により小型化と高効率化を実現したものです。現在、スマートフォンなどの電子機器は世界中で増加の一途をたどっていますが、その充電時間の短縮と消費電力の大幅な削減を可能にします。この栄誉ある大賞受賞を励みとして、基盤技術の開発と環境経営の推進に一層注力し、社会の持続可能な発展に貢献してまいります。
■経済産業大臣賞
和田勇・積水ハウス会長兼CEO 健康・快適に暮らしながら温暖化問題を解決するZEH「グリーンファースト ゼロ」を高くご評価いただき、誠に光栄に存じます。今後も「エコ・ファースト企業」として、業界を牽引(けんいん)する環境経営を加速してまいります。
■環境大臣賞
大坪清・レンゴー会長兼社長 “Less is more.”。より少ない資源で大きな価値を生む、当社のパッケージづくりを高く評価いただき、大変光栄に存じます。受賞を励みに、これからもパッケージングのイノベーションを通じて、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
■文部科学大臣賞
森明夫・香川県立多度津高校前校長 これまでの学校での取り組みに対し、このような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。これからも授業や課外活動を通じて高校生の目線から考えて実践する環境活動に参加し、地域社会に貢献したいと思います。
■国土交通大臣賞
大野直竹・大和ハウス工業社長兼COO ZET(ネット・ゼロ・エネルギー・タウン)の普及・拡大を高く評価いただき、大変光栄に存じます。今回の受賞を励みに、今後も地域住民の豊かな住生活を実現する環境配慮型のまちづくりを通じて、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。
■日本経済団体連合会会長賞
北島義斉・大日本印刷副社長 太陽光を効果的に反射・拡散し、室内をより明るくする「DNP採光フィルム」を高くご評価いただき、誠に光栄に思います。今後も印刷技術を応用・発展させて“新しい価値”を生み出し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
■フジサンケイグループ賞
溝内良輔・キリンホールディングス常務執行役員 資源の有効利用やリサイクルのしやすさなど、長年にわたって行ってきた、環境に配慮した容器包装の開発を高くご評価いただき、誠に光栄に存じます。本受賞を励みに、今後も持続可能な社会の実現に努めてまいります。
■奨励賞
中島鷹秀・アエラホーム社長 当社が開発した外張W断熱住宅「クラージュ」およびその普及促進活動を高く評価いただき、大変光栄です。この賞を励みに、これからも「より良い家をより多くの方に」の基本方針の下、「クラージュ」の普及促進を続けるとともに、地域社会と地球環境に貢献していきます。
松木徳夫・特定非営利活動法人アースライフネットワーク代表理事 名誉ある賞をいただき、感謝申し上げます。今後も子供たちとともに考え、向き合いながら地球を守る行動につなげて行く所存でございます。今回の受賞の喜びを多くの仲間と分かち合い、さらなる温暖化防止活動に取り組んでまいります。
第26回「地球環境大賞」の授賞式でお言葉を述べられる秋篠宮さま =10日午後、東京・元赤坂の明治記念館(菊本和人撮影)
本日、第26回「地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とともに出席できましたことを、大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。
近年、地球温暖化の防止や生物多様性の保全など環境諸問題に対する人々の関心や意識は大いに高まりを見せるようになってまいりました。このようななか、気候変動とも関係する可能性がある自然災害が世界各地で数多く発生し、甚大な被害を与えて、人々の生活に大きな影響を及ぼしています。つい先頃も大雨による河川の氾濫や土砂崩れがペルー、コロンビアで発生し、多数の死傷者も出ています。地球環境に関わる問題を考えるとき、環境の保全とともに、防災や減災についての意識をいっそう高め、人類が自然と共存していく必要性を強く感じております。
今年で第26回を迎えた、この地球環境大賞は、環境を守りながら発展する産業や持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品や技術の開発、地球環境に対する社会の意識の向上など、環境保全の取り組みを顕彰することで、社会に貢献することを目的として創設されました。そして産業界に始まり、自治体、学校、市民グループへと表彰の対象を広げながら、環境活動に熱心に取り組む人々を広く顕彰することによって、地球環境の保全、人々の環境意識を高めることに貢献してまいりました。
一昨年、国連で採択された温暖化防止のための新しい国際的枠組みである「パリ協定」は昨年11月に発効されましたが、緑豊かな水の惑星といわれるこの地球に、多くの貴重な生命を末永く育んでいくことができるよう、環境問題の解決に積極的に取り組んでいくことが、今現在、そして将来的にたいへん重要なことと言えましょう。そのことを実行していくため、今後とも、日本の知識や技術が国際的な貢献を果たしていくことは誠に大切なことと思います。
終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がりを見せることを祈念し、私のあいさつといたします。
本日、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、また、多くのご関係の皆様にご出席いただく中、第26回「地球環境大賞」の授賞式を行わせていただきますことに、心から感謝申し上げます。
私どもフジサンケイグループが、「産業の発展と地球環境との共生」を基本理念に平成4(1992)年に創設した地球環境大賞顕彰制度は、今年で26回を迎えることができました。秋篠宮同妃両殿下には当初から一貫して、授賞式にご臨席を賜り、また、WWFジャパンをはじめ、関係各方面の皆様のご協力、ご支援を受けて、日本を代表する環境顕彰制度として、広く社会に定着して参りました。改めて厚く御礼申し上げます。
地球温暖化をめぐっては、「京都議定書」に代わる新たな国際的枠組みである「パリ協定」が昨年11月に発効し、本年は、いよいよ実施ルール作りが本格化致します。
こうした中、アメリカのトランプ大統領は、環境保護や地球温暖化対策を優先する、これまでの政策を大きく見直す方針を示しており、温暖化問題の今後の方向性が見えにくくなっております。しかし私たちは、各国が合意した目標に向けて、着実に前進していくことが重要ではないかと考えております。
社会の持続的な発展のために、経済界・産業界が果たすべき環境問題解決の役割は一段と重要になっており、私たち一人一人の英知を結集していくことが求められています。フジサンケイグループは、この地球環境大賞顕彰制度を通じて、あらゆる分野で「環境と経済」「環境と社会」の調和による豊かで活力あふれる国づくりに今後とも邁進(まいしん)して参る所存であります。
皆様方のなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、挨拶とさせていただきます。
ただいまご紹介をいただきました顕彰制度委員長の御手洗でございます。本日は、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、第26回「地球環境大賞」の授賞式が開催できましたことを、心から感謝申し上げます。そして、本日、受賞される皆様に心よりお祝い申し上げます。
この地球環境大賞は、関係者の皆様方のご尽力、ご努力により、権威と影響力のある顕彰制度として、産業界をはじめ各界・各層から高い評価と支持を得ております。そして、より良き社会や新たな時代の創造に寄与してまいりました。
地球規模の環境問題の解決が人類共通の課題となる中、日本の優れた技術や知識、地道でたゆみない環境活動が、世界の発展と持続可能な社会の構築に貢献してまいりましたことは、誠に喜ばしい限りでございます。
顕彰制度委員会委員長として、今後も本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、努めてまいる所存でございます。より一層のご理解・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下ご臨席の下、第26回「地球環境大賞」の授賞式がこのように盛大に執り行われましたことを、お喜び申し上げます。
審査委員を代表し、審査結果について講評いたします。
今回は、企業や団体、学校など全国から合計109件の応募がありました。いずれも、四半世紀続く「地球環境大賞」の理念にふさわしい優れた成果をあげておりますが、今回はスマートフォンなどさまざまなモバイル機器の急速充電を可能にする世界最小・最高効率のACアダプターを開発した富士通に「大賞」を授与することにいたしました。
アダプターのスイッチ素子に動作抵抗の小さい、GaN−HEMT(ガンヘムト)と呼ぶ、窒化ガリウム高電子移動度トランジスタを使用することで、従来の3分の1の急速充電を可能とし、環境負荷低減に大きく寄与できる点を評価したものです。また、今回は住宅メーカーの省エネに対する積極的な活動が目を引きました。こうした取り組みが、家庭部門の二酸化炭素(CO2)排出削減につながることを期待したいと思います。
第26回を迎えた本顕彰制度が今後、ますます充実し、低炭素社会の実現、持続可能な循環型社会の構築に寄与することを祈念するとともに、環境活動に積極的に取り組む産学官、市民グループの良き指針となることを願って、講評といたします。ありがとうございました。
本日は、秋篠宮殿下、同妃殿下ご臨席の下、栄誉ある第26回「地球環境大賞」を頂戴いたしまして、誠に光栄に存じます。受賞者を代表いたしまして、お礼のご挨拶を申し上げます。
今回の大賞受賞においてご評価いただいたACアダプターは、革新的な省エネデバイスであるGaN−HEMT(ガンヘムト)を活用し、高効率化、小型化、急速充電を実現したものです。スマートフォンなどのモバイル機器は世界中で増加の一途をたどっていますが、本ACアダプターは、機器をご利用になる皆さまの利便性を高めるとともに、温室効果ガス排出削減にも大きく貢献するものと存じます。
「HEMT」とは「高電子移動度トランジスタ」という半導体素子の略称です。HEMTは、1979年に当社研究所にて発明され、衛星通信や携帯電話基地局の高性能化を実現してきました。GaN−HEMTは、これを窒化ガリウムという素材を用いて作ったもので、電源制御において優れた性能を発揮いたします。この小さなACアダプターは、当社の長年の基礎研究とICTの基盤技術の蓄積の上に実現したものでございます。
GaN−HEMTの電源技術は、ACアダプターに限ったものではありません。サーバーやネットワーク機器に応用していくことで、データセンターの省エネルギーにもつながっていきます。
さらにはさまざまな電気製品に利用されることで、社会全体の大幅なエネルギー効率の改善と気候変動対策にも貢献するものと確信しております。それに向けて、この技術に関する知的財産を、当社内に限らず、より多くの皆さまにお使いいただけるような仕組みを検討してまいります。
富士通は、テクノロジーで人を幸せにするという信念の下に、継続的にイノベーションにチャレンジし、豊かな未来の実現を目指しております。また、企業指針の中で、社会に貢献し地球環境を守ることを掲げ、地球環境への配慮は極めて重要な経営戦略の一つと捉えています。この技術を通して、地球環境に貢献し、ひいては豊かな未来の実現をサポートできることを大変誇りに思います。
今回の受賞を励みに自社の技術をさらに深化させるとともに、産官学の幅広い分野の皆さまとの連携によって新たな価値を創り出し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
最後になりますが、この「地球環境大賞」の主催者であるフジサンケイグループをはじめ、全ての関係者の皆さまにお礼を申し上げます。この「地球環境大賞」が、わが国を代表する環境顕彰制度として、より一層ご発展されますこと、そして本日ご臨席の皆さまの、ますますのご健勝を心から祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。
レセプション会場では、地球環境大賞に特別協力しているWWFジャパンの徳川恒孝会長に、産経新聞社の太田英昭会長から寄付目録が手渡された。
あいさつに立った徳川会長は「地球環境を良くしようと大企業が真剣に努力しているのは、世界でも日本ぐらいだろう。私がこれまでに訪れた40数カ国では各国が環境問題に取り組んでいるが、荒っぽさが目につく。今回受賞した各社の話を聞いて、細かいことまで気を遣える日本人の力は素晴らしいとつくづく思った。これからも協力をいただきたい」と述べた。