大賞を受賞した大日本印刷の北島義斉社長(左)に、フジサンケイグループの日枝久代表からトロフィーが手渡された=22日、東京・元赤坂の明治記念館
産業の発展と地球環境との共生を目指し、温暖化の防止や環境保全活動に取り組む企業・団体を表彰する第28回「地球環境大賞」(主催・フジサンケイグループ)の授賞式が22日、秋篠宮ご夫妻をお迎えして、東京・元赤坂の明治記念館で開かれ、各賞受賞者に表彰状とトロフィーが手渡された。
式典では大賞に輝いた大日本印刷の北島義斉社長が、食糧の安定供給に向け、低温状態を維持しながら長距離輸送を可能にする「コールドチェーン」の重要性を強調。これを実現する技術が評価されたのを受け「これからも多くの社会課題の解決に取り組み、持続可能な地球環境の実現に努めていく」と述べた。
また、フジサンケイグループの日枝久代表は「国連の『持続可能な開発目標(SDGs)』の達成に向けて日本の強いリーダーシップが求められている」とした上で、「令和の時代もこの顕彰制度を通じて、あらゆる分野で『環境と経済』の調和による豊かで活力あふれた国づくりに邁進(まいしん)していく」と挨拶した。
地球環境大賞顕彰制度委員会委員長を務めるキヤノンの御手洗冨士夫会長CEO(最高経営責任者)は「美しい地球を次代の人たちにバトンタッチすることが、われわれの大きな責務。本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、務めていく」と語った。
授賞式後のレセプションには産業界を中心に官界、学界などから約500人が出席。受賞者を祝福するとともに交流の輪が広がった。
初夏を思わせるような日差しが降り注ぐ22日、東京・元赤坂の明治記念館で行われた平成最後の第28回「地球環境大賞」授賞式。出席した受賞企業トップをはじめ産学官の多くの関係者が地球温暖化の防止や脱炭素社会の実現など環境問題の解決に取り組む姿勢を強調、令和の新時代に向け産業の発展と地球環境との共生へ決意を新たにした。
授賞式を前に、庭園で記念撮影する受賞各社の代表ら=22日、東京・元赤坂の明治記念館
■大賞
北島義斉・大日本印刷社長 歴史ある「地球環境大賞」で高い評価をいただき、光栄に存じます。私たちDNPは「P&I(印刷と情報)」の強みを掛け合わせ、社会課題を解決し、人々の期待に応える価値の創出に注力しています。「DNP多機能断熱ボックス」をはじめ、環境負荷の低減などにつながる製品・サービスの提供を通じて、「未来のあたりまえ」をつくり、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
■経済産業大臣賞
田中稔三・キヤノン副社長CFO 「キヤノンエコテクノパーク」をはじめとしたキヤノンの環境への取り組みの姿勢と実績を高く評価いただき、誠に光栄に存じます。今後も循環型社会に資する活動を通じ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
■文部科学大臣賞
前田良文・鹿児島県立鶴翔高等学校校長 地域からいただいた課題を、高校生が5年間ひたむきに研究した成果が、地球環境に貢献する取り組みとして高く評価され、誠に光栄に存じます。今後も鶴翔高校は地域のさまざまな課題解決の研究を進めますが、地域から世界の持続可能な未来社会の構築を意識して貢献してまいります。
■国土交通大臣賞
高下貞二・積水化学工業社長 再生可能エネルギーだけで暮らすことを目指した「エネルギー自給自足型住宅」を高く評価いただき誠に光栄に存じます。今後はリフォームや集合住宅などへの適用範囲を拡大し地球温暖化防止や循環型社会の実現に貢献してまいります。
■農林水産大臣賞
辻裕・国土防災技術社長 森林資源を利用した高濃度フルボ酸の量産化技術とフルボ酸を活用した環境改善技術を高く評価していただき、誠に光栄に存じます。環境保全、農業・林業分野のほか、多様なニーズを探求し続け、持続可能な社会に向けて貢献してまいります。
■日本経済団体連合会会長賞
芳井敬一・大和ハウス工業社長 国際イニシアティブ「EP100」「RE100」に加盟し、推進している「エネルギー自立建築への取り組み」を高く評価いただき、誠に光栄です。このたびの受賞を励みに、今後も住宅・建築・まちづくりを通して脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
■フジサンケイグループ賞
井床眞夫・サントリーホールディングス常務執行役員 飲料用PETプリフォーム製造において、リサイクル技術による温室効果ガス排出削減を高くご評価いただき、大変光栄に存じます。今後も技術開発を通じて、持続可能な社会の構築と地球環境の保護に貢献してまいります。
■奨励賞
桐山浩・コスモエネルギーホールディングス社長 石油事業や風力発電事業において幅広く環境に配慮したエネルギー供給に取り組んでいること、また長期にわたり環境CSR活動を継続していることを高く評価いただき、大変光栄に存じます。今回の受賞を励みに、今後も持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
授賞式でお言葉を述べられる秋篠宮殿下=22日、東京・元赤坂の明治記念館
本日、第28回地球環境大賞の授賞式にあたり、出席された多くの皆さまとともに、各賞を受賞される方々をお祝いできますことを誠に喜ばしく思います。
近年、気候変動や生物多様性の喪失、マイクロプラスチックの問題など、私たちを取り巻く環境に対する関心や意識が高まり、グローバルな広がりを見せております。
また、地球温暖化が大きな要因とみられる自然災害が世界の各地で数多く発生しており、わが国においても異常気象による豪雨など、その甚大な被害が人々の生命と生活に大きな影響を及ぼしています。
地球環境に関わる問題を考えるとき、自然環境の保全とともに、防災や減災に対する意識を一層高め、私たちがどのようにして自然と共存していくのか、その方途を探求する必要性を強く感じます。
今年で第28回を迎えた地球環境大賞は、環境を守りながら発展する産業や、持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品とそのための技術開発など、環境保全の取り組みを顕彰することで、社会に貢献することを目的として創設されました。そしてこの間、産業界に始まり、自治体、学校、市民グループへと表彰の対象を広げながら、環境活動に積極的に取り組む人々を広く顕彰し、人々の環境意識を高めることで、地球環境の保全に貢献してまいりました。
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」、いわゆるSDGsや、2020年から始まる温暖化対策のための国際的枠組みである「パリ協定」が注目を集めるなか、わが国は今以上に優れた環境関連技術や知識をもって世界に貢献していくことが求められましょう。
そして持続可能な経済、社会づくりのために、国際社会のモデルとなるような実績を積み重ねていくことも誠に大切なことと思います。
終わりに、受賞者をはじめとする皆さまが、今後とも地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がりを見せることを祈念し、私のあいさつといたします。
本日、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、また多くのご関係の皆さまにご出席いただく中、第28回「地球環境大賞」の授賞式を行わせていただきますことに、心から感謝申し上げます。
さて、環境・エネルギー問題をはじめ地球規模の課題解決に向けては、経済界・産業界の果たすべき役割が一段と重要になっております。そして、持続可能な地球の未来は、私たち一人一人の叡智(えいち)の結集とその実行力にかかっているといっても過言ではありません。
ここ数年、わが国では多くの自然災害が発生し、全国各地に大きな被害をもたらし、被災した人々の生活に深刻な影響を及ぼしております。
これらの災害の多くは気候変動による異常気象が一つの要因とみられており、その意味からも、日本は優れた環境関連技術や知識をもって世界に貢献していくことが何より重要であります。また、気候変動などさまざまな問題の解決に産業界が果たす役割もますます大きくなっており、持続可能な地球の明るい未来の実現は、私たち一人一人の叡智(えいち)の結集とその実行力にかかっているといっても過言ではありません。
私どもフジサンケイグループが平成4年に創設した地球環境大賞顕彰制度は、「産業の発展と地球環境との共生」を基本理念としており、今年で第28回を迎えることができました。秋篠宮同妃両殿下には当初から一貫して授賞式にご臨席を賜り、また、WWFジャパンをはじめ関係各方面の皆様のご協力、ご支援を受けて、日本を代表する環境顕彰制度として広く社会に定着してまいりました。
今回が平成最後の授賞式となりますが、フジサンケイグループは、次の令和の時代も、この地球環境大賞顕彰制度を通じて、あらゆる分野で「環境と経済」「環境と社会」の調和による豊かで活力にあふれた国づくりに今後とも邁進(まいしん)してまいる所存であります。
皆様方のなお一層のご支援を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下のご臨席を賜り、第28回「地球環境大賞」の授賞式が開催できましたことを、心から感謝申し上げます。そして、本日、受賞される皆さまに心よりお祝い申し上げます。
さて、地球環境問題の解決は人類共通の課題であり、社会の持続的発展には、地球環境の安定が何より重要であります。日本の優れた技術や知識、地道でたゆみない環境活動が世界の発展に寄与し、環境に配慮した豊かな時代を築いていくことは、誠に大切なことであり、美しい地球を次代の人たちにバトンタッチすることが、われわれの大きな責務でもあります。
この地球環境大賞は、関係者の皆様方のご尽力により、権威と影響力のある顕彰制度として、産業界をはじめ各界・各層から高い評価と支持を得ており、より良き社会や新たな時代の創造に寄与してまいりました。
顕彰制度委員会委員長として、本賞の社会的な評価をさらに高め、社会・経済の持続的発展の一助となるよう、努めてまいる所存でございます。今後ともより一層のご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下ご臨席のもと、栄誉ある第28回地球環境大賞を頂戴いたしまして、誠に、光栄に存じます。受賞者を代表し、一言、ご挨拶を申し上げます。
いま世界では、急速な人口の増加が予想されており、食糧の増産とともに、広く安定的に供給していくことが、各国・地域の喫緊の課題になっています。それに対して、常温での輸送や長期保存が可能なパッケージの普及に加え、低温状態を保ちながら、途切れることなく長距離の輸送を可能にする「コールドチェーン」の整備などが求められています。
一方で、先進国を中心に、多くのフードロスが発生していることも大きな問題となっています。こうした課題に対して、私たち、DNP大日本印刷は、ICタグを活用したトレーサビリティー(生産流通履歴)の仕組みを構築するとともに、内容物を長期保存できる機能的なパッケージの開発などに取り組んできました。
今回、大賞としてご評価いただいた「DNP多機能断熱ボックス」は、酸素などの気体を通しにくい「ハイバリアフィルム」を活用した「真空断熱パネル」を使用しています。
これは、従来の断熱材よりも断熱性が高いため、電力を使わずに、ボックス内部の温度を長時間一定に保つことができます。また、DNP独自のシミュレーションソフトによって、運ぶ距離や内容物に合わせて、最適な量の保冷剤を割り出せるため、より効果的に、一定の温度を長時間保ちながら輸送することができます。この断熱ボックスは折り畳みが可能で、繰り返し使えるほか、ドライアイスを使わずに保冷剤に切り替えることで、温室効果ガスの排出量も削減できます。
いまDNPグループは、「印刷」と「情報」の強みを掛け合わせて、社会が抱える課題を解決し、人々の期待に応える「新しい価値」を提供していくことを目指しています。
事業の成長領域を4つ定めており、その一つである「環境とエネルギー」では、サプライチェーン全体を視野に入れた環境負荷の低減や気候変動への対応などに取り組んでいます。
これまで私たちは、「地球環境大賞」において、平成6年、17年、29年に各賞に選んでいただいていますが、平成最後となる今年、最高の栄誉である「大賞」の受賞となりました。これをさらなる励みとして、これからも多くの社会課題の解決に取り組み、持続可能な地球環境の実現に努めてまいりたいと考えています。
最後になりますが、この地球環境大賞の主催者でありますフジサンケイグループをはじめ、全ての関係者の皆様方に御礼申し上げます。この地球環境大賞が、わが国を代表する環境顕彰制度として、より一層発展されることを、そして本日ご臨席の皆さまのますますのご健勝を心より祈念しまして、私のご挨拶とさせていただきます。
本日は、秋篠宮同妃両殿下のご臨席の下、第28回地球環境大賞の授賞式がこのように盛大に執り行われましたことを、お喜び申し上げます。審査委員を代表し、第28回の審査結果について講評いたします。
今回は全国の企業や団体、学校などから合計104件の応募が寄せられました。審査を通じて実感したのは、脱炭素化社会、持続可能な循環型社会の実現に向けた環境問題への取り組みが、産業界のみならず各界・各層で一段と進んでいることです。
また、2020年にスタートする温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」や国連の持続可能な開発目標(SDGs)を意識した活動も各方面で活発化しており、それぞれの企業・団体が「地球環境大賞」の理念にふさわしい取り組みをし、成果を挙げていることは大変喜ばしいことです。
今回、大賞を受賞した大日本印刷の「DNP多機能断熱ボックス」は、非常に高い断熱性能を有し、輸送用梱包(こんぽう)などとしてさまざまな利点を発揮します。「光」や「熱」「気体」などを制御する高機能フィルムがもたらす付加価値は、経済発展と地球環境の保全を両立させ、持続可能な社会の実現に大きく寄与するものとして高く評価いたしました。
環境のフロントランナーともいえるこうした企業や団体の素晴らしい取り組みが温室効果ガスの排出削減など地球環境問題の解決につながることを大いに期待したいと思います。
第28回を迎えた本顕彰制度が今後、ますます充実し、地球環境の保全活動に積極的に取り組む産学官、市民グループの良き指針となり、持続可能な循環型社会の構築に寄与することを祈念して、講評といたします。
末吉竹二郎会長(右)
レセプション会場では、地球環境大賞に特別協力しているWWFジャパンの末吉竹二郎会長に、産経新聞社の熊坂隆光会長から寄付目録が手渡された。
挨拶に立った末吉会長は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が将来的に世界の平均気温が産業革命前より1.5度上昇すると警告したことに触れ「人類社会が地球温暖化との戦いに勝利できるか否かは、次の10年にかかっている」と強調。「次の世代に一つしかない美しいプラネット(惑星)をきれいな形で受け継ぎたい。皆さんと協力しながら、大切な戦いに勝ちたい」と述べた。
授賞式後のレセプションで乾杯の音頭をとる前回大賞を受賞した積水ハウスの阿部俊則会長=22日、東京・元赤坂の明治記念館
第28回「地球環境大賞」では、会場となった明治記念館の中庭に受賞者が集まり、ご臨席された秋篠宮ご夫妻に、自社の受賞理由や環境技術を説明した。授賞式後のレセプションには、受賞者に加えて経済界などから多数の関係者が出席し、秋篠宮ご夫妻を囲む形で歓談の輪が広がった。
ご夫妻は環境技術や製品に対するご関心が高く、紀子さまがとくに興味を示されていたのがリサイクル技術。悠仁さまが強い関心を抱かれているのが理由の一つで、「『分別は大事だと学ばれているようです』とおっしゃっていました」(サントリーホールディングスの井床眞夫常務執行役員)。また、秋篠宮殿下からは「よりクリーンなペットボトルができることで多くの人に役に立ちますね」と声をかけられたという。
コスモエネルギーホールディングスの桐山浩社長は、洋上風力発電に進出したいとの意向を述べたところ、殿下は「潮流発電はどうですか」と質問されたという。
大和ハウス工業の芳井敬一社長は、再生可能エネルギーによる電力自給自足オフィスにまつわる苦労話を説明。殿下は「春夏秋冬によって、かなりデータは異なってくるのですか」と、強い関心を抱かれていたそうだ。
積水化学工業もエネルギー自給自足型住宅の開発に関わる話を中心に、説明を行った。これからは供給戸数を増やすことが目標であることを伝えると、殿下からは「『頑張ってください』との激励の言葉を頂いた」(高下貞二社長)という。
鹿児島県立鶴翔高校(阿久根市)の農業科学科3年の日高翔さん(17)は受賞テーマとなった、廃棄ウニを活用した農業用有機発酵液の開発のきっかけについて説明した。紀子さまは発酵液そのものに関心を持たれているご様子だった。
大日本印刷は、魔法瓶のように内部の温度を長時間一定範囲に保つ輸送用の断熱ボックスをレセプション会場に持ち込み、殿下に説明した。北島義斉社長によると「東南アジアにも電力を使わずに運べることに関心を持たれていた」という。
今回の受賞を機に、環境対策に一段と弾みをつけたいという声も聞かれた。
キヤノンは今後、環境ビジネスの拡大に力を入れる方針で、田中稔三副社長は「製品の再利用によって販売価格の低減と環境貢献を両立したい」と述べた。
また、積水化学の高下社長は「次の環境貢献製品を創出しスピード感をもって普及させていくことがミッション」と強調。大和ハウスの芳井社長は「温暖化対策に関する2つの国際イニシアチブに参加しており、積極的に環境問題に貢献したい」と意欲を示していた。