産經新聞社賞
ウェーブフロントアナライザーKR−9000PW
株式会社トプコン
技術・品質グループ研究所 光応用研究室
広原 陽子氏
医用機器事業部 医用機器技術部 医科・眼鏡グループ
石倉 靖久氏 |
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今までの視力の矯正は、主にメガネ・コンタクトレンズにより、近視・遠視・乱視の矯正が行われてきました。円錐角膜等の不正乱視は、現在眼科外来で普及している装置では、正しい測定・評価が行えなかったのが現状です。
さらに近年エキシマレーザによる角膜屈折手術が世界的に普及する中で、より正確に眼球全体の光学特性を評価する装置が求められております。
この度当社では、大阪大学医学部眼科学教室と共同で、他覚屈折力測定・角膜曲率半径測定・角膜形状解析に加え、新技術の波面センサー※により今まで測定できなかった眼球全体の光学的収差の測定・解析を1台で可能にする多機能な屈折解析装置を世界で初めて開発いたしました。
このウェーブフロントアナライザー KR−9000PWは、有名スポーツ選手により一躍注目を浴びたエキシマレーザーによる角膜屈折矯正手術(LASIK)のための手術ガイドデータを提供することができ、人眼の収差を極限まで減少する"スーパーノーマルビジョン"の可能性を開く、画期的な製品です。
特 長
*1台4役 マルチファンクション
他覚屈折力測定・角膜曲率半径測定・角膜形状マッピングに加え、波面センサーによる波面収差の測定・解析を1台で可能にする多機能な屈折解析装置。
*波面収差・角膜形状を1回の操作で測定可能。
*不正乱視の測定・解析が可能。
*夜間・昼間の収差データの比較が可能です。
瞳孔の狭い昼間に良く見えても、瞳孔が開く夜間になると収差により見えづらくなる事があります。本装置は両方のデータの比較により夜間での見え方の予測が可能です。
*収差データによりシミュレーションが可能です。
収差データを基に「被検者がどのような見え方をしているのか」の画像シミュレーションが可能です。
*手術ガイドデータを提供します。
KR−9000PWで測定されたデータは、エキシマレーザーによる角膜屈折矯正手術等の手術ガイドデータとして利用できます。
仕 様
*測定範囲 |
:遠視 0〜+22D/0.25Dステップ表示(0.12D/0.25Dステップ表示切換式) |
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:近視 0〜-25D/0.25Dステップ表示(0.12D/0.25Dステップ表示切換式) |
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:乱視 0〜-8or+8D/0.25ステップ表示(0.12D/0.25Dステップ表示切換式) |
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:軸角度0〜180° 1°ステップ表示( 1°/5°ステップ表示切換式) |
*角膜曲率測定 |
:角膜曲率半径 5.00mm〜10.00mm |
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:角膜屈折率 67.50〜33.75D |
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:角膜乱視度 0〜10D (+またはー) |
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:角膜乱視軸角度 0〜180° |
*屈折系収差測定 |
:Hartmann−Shack Wave−front センサー |
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:Zernike多項式 6次までを計算 |
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:屈折系の収差 総合及び高次項マップデータの表示 |
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:測定範囲 0±15D |
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:測定領域 7.00mmφ |
*角膜形状・収差測定 |
:プラチドリング 11本 |
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:測定サンプリング 3960点 |
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:角膜曲率半径 5.00mm〜10.00mm |
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:角膜屈折率 67.50〜33.75D |
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:測定領域 1.0mmφ〜9.20mmφ |
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:角膜形状 カラーマップ表示 |
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:角膜収差 Zernike多項式 6次までを計算 |
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:角膜収差 総合及び高次項マップデータの表示 |
*最小瞳孔径 |
:φ2.0o |
*測定固視 |
:オートフォグ(自動雲霧方式) |
*測定値記録 |
:プリンターによる記録方式(右眼・左眼各々10回の測定値のメモリー) |
*モニターテレビ |
: 5インチ |
*消費電力 |
:120VA(節電機能:パワーセーブ方式) |
*大きさ(本体) |
:幅310mm×奥行き475mm×高さ500o |
*質量 |
:23kg |
医療用具許可番号 |
:13BZ0031 |
その他
*発 売 |
: 平成13年12月(日本国内) |
*販 売 国 |
: 全世界 |
*発売目標 |
: 初年度 300セット |
*国内価格 |
: KR-9000PW \ 6,300,000 (税別) |
※ 波面センサ
KR-9000PWに利用されているHartmann-Shack(ハルトマン-シャック)波面センサは、マイクロレンズが格子状に配列されたハルトマンプレートと二次元CCDとから構成されています。
KR-9000PWは、被検眼の網膜上に点光源を投影し、網膜で反射された反射光をハルトマンプレートで多数の光束に分割し、それぞれの光束による点像位置を二次元CCDで測定し、無収差眼の場合の点像位置とを比較することにより被検眼の波面収差を測定します。
補足説明
1.独創性
ウェーブフロントアナライザー KR−9000PWは、地球上から宇宙を観測する高性能天体望遠鏡にも一部利用されている大気のゆらぎなどを補正する収差計測にも使用されているハルトマン・シャックセンサー(*1)を眼の計測に応用し、今まで不正乱視と言われていた眼球光学系の高次収差の定量的測定を可能としました。
さらに、KR−9000PWは、このハルトマン・シャック波面センサーによる眼球光学系全体の高次収差測定機能に加え、(i)一般的に普及している眼屈折力測定のためのレフラクトメータ機能、(ii)角膜の主経線の曲率半径/角膜屈折力の測定を行うケラトメータ機能、および(iii)角膜形状測定機能を追加し、これら4つの機能をコンパクトに1台に搭載し、眼の屈折光学的特性の全てを1台で測定できる装置に完成させました。
また、KR−9000PWは、世界で唯一、眼球光学系と角膜表面の両方の高次収差を1台で測定可能とし、かつ両者を同時に測定する事を実現しました。
この機能合体により角膜単体における収差と眼球光学系全体における収差との比較ができるようになりました。特にレーザによる屈折矯正手術においては角膜形状を変える手術であることから、眼球光学系の収差と角膜形状・収差の測定はきわめて重要です。
KR−9000PWは、高次収差解析のために、解析専用ソフトウェアを搭載したPCと組合せて使用されますが、KR−9000PW単体で使用することもでき、その場合には通常のレフラクト・ケラトメータとしても機能し、眼鏡やコンタクトレンズの処方に必要な球面屈折力、円柱屈折力、円柱軸角度(主経線曲率半径、主経線屈折力)のみの測定をすることができます。
この通常のレフ・ケラトメータ機能との一体化は、眼球光学系・角膜の収差計測を行う場合に、その測定のためのハルトマン・シャック波面センサーの光学的位置をこのレフ・ケラトメータの測定結果で調節することにも併用でき、これにより収差測定の測定レンジを大幅に拡大(-15〜+15Diopter)することができました。
従来の自覚式、他覚式いずれの検眼方式においても検眼する際に、検者側には、被検者に視力チャートが実際にどのように見えているかを想像することさえ不可能です。KR−9000PWは、それにより測定できる眼球光学系の収差データを利用して、逆に被検者に視力チャートがどの様に見えるかをシミュレーションする機能を有しており、患者へのインフォームドコンセントにも有効です。
さらに、本装置は、角膜形状測定にも近赤外光を使用することにより、被検者への負担を軽減するのみならず、左右眼の連続測定や単眼の繰り返し測定の場合でも、眼球光学系の収差計測に重要な瞳孔サイズに対する影響を大きく減少させ、高精度測定の実現に寄与しています。
2.将来性
KR−9000PWにより、従来眼鏡などで矯正しきれない収差(不正乱視という言葉で表現されている)、すなわち眼の高次収差の定量的な測定が可能とした他、不正乱視成分を分析・解析したデータを各収差データとして出力することができます。
現在、各種機関により、より良い視機能QOV (Quality of Vision) を獲得するため、眼の不正乱視成分を矯正するレーザによるカスタム照射手術・眼鏡・コンタクトレンズ・IOL等のカスタム化の研究が行われており、本装置はこれら研究に必要なデータを出力することができ、これら研究と相まって、網膜の性能を100%引き出せる可能性があります。
視機能の評価には一般的には視力値が利用されていますが、生活においてのQOVを求めるには単に視力のみの評価ではなく、眼の持つ収差を知ることが重要であり、その評価には本装置が必要です。
また、本装置に利用されている波面センサーの技術を利用して高次収差を測定し、その収差を補正するアダプティブオプティックス(*2)と組合せることにより、眼底カメラなど各種光学的な観察を行う装置について、より高品質・高精度な観察や画像データの取得への展開や応用も期待されます。
用語の解説:
*1)ハルトマン・シャックセンサー:マイクロレンズアレイとCCDカメラとからなるセンサー
添付資料(2)「人眼の波面収差測定」参照
*2)アダプティブオプティックス:補償光学とも呼ばれ、デフォーマブルミラー(ミラーを歪ませる)により収差を打ち消す機能を持つことで実現される。
添付資料:
(1)KR−9000PW関連文献リスト
(2)「人眼の波面収差測定」:広原陽子他(VISION Vol.13, No.2, 99-105 ( 2001))
(3)「人眼の波面収差測定」:三橋俊文他(レーザ研究、Vol.29, No.7, 415-420( 2001))
(4)"Wavefront analys(J. CATARACT SURG. Vol. 28, March 2002)
(5)「被力とコントラスト感度と眼の波面収差」(光学, Vol.31, No.1(2002))
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関連文献
1.Practical Ophthalmology 71診療に役に立つ眼光学p.111-113文光堂『Topics波面センサーと収差』三橋
俊文(トプコン)
2.レーザー研究The Review of Laser Engineering Vol.29, No7
July 2001p.415-420社団法人 レーザー学会『人眼の波面収差測定 Wavefront Aberration
Measurements of the Human Eye』三橋 俊文(トプコン)
3.Vision Vol. 13, No.2 , 2001p.99-105『解説人眼の波面収差測定』広原
陽子・中澤 直樹高橋 義嗣・三橋 俊文(トプコン)黒田 輝仁・前田 直之不二門 尚 (大阪大学)
4.眼科手術第14巻第2号 2001年4月p.213-217メディカル葵出版『Wavefront技術による屈折矯正手術』前田
直之(大阪大学)
5.眼科手術第14巻第2号 2001年4月p.219-222メディカル葵出版『新しい角膜形状解析装置』前田
直之(大阪大学)
6.海外眼科文献情報Ophthalmology UpdateVol.16 No.2 2001p.3-7Excerpta
Medica『Review波面収差解析と屈折矯正手術』前田 直之(大阪大学)
7.海外眼科文献情報Ophthalmology UpdateVol.16 No.2 2001p.8-9Excerpta
Medica『Case Report屈折矯正手術後の高次波面収差』黒田 輝仁・前田 直之(大阪大学)
8.Current Opinion in Ophthalmology2001, 12:294-299ISSN
1040-8738 Lippincott Williams & Wilkins, Inc『Wavefront
technology in ophthalmology』Naoyuki Maeda MD
9.臨眼55巻9号 2001年9月p.1599-1602『波面収差解析と補償光学』前田 直之(大阪大学)
10.あたらしい眼科Vol.18, No.10, 2001p.1289-1291『屈折矯正手術セミナー17.眼光学系の収差』大鹿哲郎(東京大学)
11.あたらしい眼科Vol. 18, No.11, 2001p.1357-1361『特集・不正乱視の評価と治療Hartmann-Shackセンサーの臨床応用』二宮さゆり・前田直之(大阪大学)
12.あたらしい眼科Vol. 18, 臨時増刊号, 2001p.41-44『Q1 ( Q & A
: Wavefront )ウエーブフロントって何ですか?』三橋 俊文(トプコン)
13. あたらしい眼科Vol. 18, 臨時増刊号, 2001p.45-47 Q2 ( Q &
A : Wavefront )どのような各種測定機器がありますか? 黒田 輝仁(大阪大学)
14.光学31巻1号(2002)p.20-24『視力とコントラスト感度と眼の波面収差』三橋 俊文(トプコン)
15.あたらしい眼科Vol. 19, No.2, 2002p.155-160『加齢による収差の増加と眼鏡処方』黒田 輝仁、不二門 尚(大阪大学)
16.J Cataract Refract Surg 2002Vol. 28: March 2002p438-444『Wavefront
analysis of higher-order aberrations in patients with
cataract』Teruhito Kuroda, MDTakashi Fujikado, MDNaoyuki
Maeda, MDTetsuro Oshika, MDYoko HiroharaToshifumi Mihashi
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