第24回先端技術大賞授賞式未来へ導く独創的な発想 (2010/7/28 東京・元赤坂 明治記念館) 近藤洋介・経済産業大臣政務官(中央)から経済産業大臣賞を授与されるJFEスチールの有賀珠子さん(中央左) 優れた研究成果をあげた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者を表彰する「第24回独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・フジサンケイビジネスアイ)の授賞式が28日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。 式典では、自動車の重量を減らし二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる高強度鋼板「NANOハイテン」を開発し、経済産業大臣賞(企業・産学部門最優秀賞)に選ばれたJFEスチール研究チームを代表して有賀珠子さんや、「コンピュータを用いた手芸設計支援に関する研究」で文部科学大臣賞(学生部門最優秀賞)に輝いた東大大学院の五十嵐悠紀さん(代理・指導教官の鈴木宏正東大教授)らに賞状が贈られた。 審査委員長の阿部博之東北大学名誉教授は「生活者視点の技術開発に力を入れ、世界を舞台にさらに飛躍してほしい」とエールを送った。 ■高円宮妃殿下お言葉(要旨)本日、第24回先端技術大賞の授賞式にあたり、皆さまとお会いできますことを大変うれしく思います。また、受賞された皆さまには心からお祝い申し上げます。毎回、若い研究者の斬新な発想とそれを実現しようとする熱い心に感心するばかりですが、女性の理科離れ、理工学部離れが心配されているなかで、3人の女性が受賞者のなかにいらっしゃることはとてもうれしいことです。 科学技術が進歩し、研究が高度になった現代でも、解明されないまま残されている研究領域は数多くあるとうかがっております。こうした未知の領域を解き明かす手がかりは、既成概念にとらわれず、科学的な側面からアプローチする柔軟な頭脳にあるのではないでしょうか。 たとえば、手作業が主であった手芸の世界にコンピューターを応用して挑むといった、まさに独創性を存分に発揮した発想が勝利するといえましょう。 最近、いろいろな意味で科学技術分野の研究開発の重要性が改めて見直されております。多くの研究者、技術者の活躍によって、7年間にわたる60億キロの宇宙の旅路から帰還し、日本国民に大きな感動と喜びを与えてくれた小惑星探査機「はやぶさ」は、まさに日本の科学技術力の結晶です。皆さまには数多くのこうしたすばらしい先輩の研究者、技術者と同じように、強い信念と柔軟な思考能力を持ち続けながら、夢を追い続けてほしいと思います。 さらに学問領域や国境を超え、力を合わせて世界の平和に貢献する研究に励んでいただくことを期待しております。 最後にお願いです。科学技術の力をもって、多くを変えることができますが、それが故に、それを実用するときの人間の資質が問われます。家庭や教育の現場、そして社会において、私たち皆が、若者をしっかりとした理念を持った人間に育てていく責任があるのではないでしょうか。そうでないと大惨事につながることだって想像できます。この学問や国境を超えて力を合わせることと、きちっとした理念を持った若者を育てることは人類の将来の安全保障だと考えます。 ぜひ皆さまには、機会あるごとにそれを思い起こされ、若い研究者、技術者の方々には、それを念頭に研究に励んでいただき、後輩たちを指導していっていただきたいと思います。 本日は科学技術のすばらしさを改めて思い起こす機会をいただき感謝申し上げますとともに、皆さまの今後の活躍を心より祈念して、式典に寄せる言葉といたします。ありがとうございました。 ■記念講演■川口淳一郎 何事も精神と忍耐強さ重要川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構教 講演先月、地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャを務めた。 この会場の看板に「独創性を拓(ひら)く」とあるが、はやぶさもまさに世界初をねらった。構想したのは30代で、それまで宇宙は片道飛行だったが、資源の有効利用を目指せば往復飛行になる。アポロは月だが、地球の引力圏の外にあるものにしようと小惑星にした。わが国で、はやぶさのような世界初のプロジェクトが立ち上がったのは大変なことで、ありがたい。 菅(直人)総理に「何が(成功のために)良かったか」を聞かれて、技術より根性と答えた。何事もスピリッツ(精神)とペイシェンス(忍耐強さ)は重要だ。はやぶさが行方不明になったとき、私たちは神頼みするようになった。「運を天にまかすのか」などと言われたが、神頼みはきっかけを見失わないようつかむためだと思う。運や機会をとらえるのも実力。みなさんの受賞も機会をつかんだ結果だろう。
|
|||||||||||||
Copyright (C) 2006 フジサンケイ ビジネスアイ |