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第30回先端技術大賞 東大大学院・岩根氏、NEC・石山氏ら表彰

(2016/7/28 東京・元赤坂 明治記念館)

授賞式で北村経夫経済産業政務官(中央右)から賞状を授与されるNECの石山塁氏ら=28日、東京・元赤坂の明治記念館

優れた研究成果を挙げた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者を表彰する「第30回 独創性を拓く 先端技術大賞」(主催・フジサンケイビジネスアイ、後援・文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、産経新聞社、ニッポン放送)の授賞式が28日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。

式典では、東京大大学院の岩根由彦さんに学生部門のグランプリに相当する「文部科学大臣賞」が、また「『物体指紋』認証技術の研究開発およびグローバルな真がん判定ソリューションの実現」に取り組んだNEC(日本電気)には、企業・産学部門の最高賞「経済産業大臣賞」がそれぞれ贈られた。このほか、医療技術や通信技術などに関する7件の研究も顕彰した。

審査委員長を務めた科学技術振興機構特別顧問の阿部博之・東北大名誉教授は「特定の学問領域に当てはまらない複合的かつ高水準の研究が数多くみられた。学生部門では、斬新な発想とユニークな着想の研究が目立ち、企業・産学部門では、生活者の視点に立った健康で快適な生活を目指す製品の研究開発が特徴的」と講評した。その上で、「科学技術の発展は、世界が抱える問題の解決と持続可能な人類社会の創造にとって必要不可欠。科学技術を志す、とくに若い研究者の皆さまが世界を舞台にさらに活躍されることを祈念する」とエールを送った。

■高円宮妃久子さまのお言葉

高円宮妃久子さま

本日、「第30回 独創性を拓く 先端技術大賞」の授賞式にあたり、皆様とご一緒できますことを大変うれしく思います。このたび、受賞された皆様、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

先端技術分野の研究開発の重要性が改めて見直され、独創的な研究開発が一段と注目を集めるようになった昨今、日本の先端技術の研究開発は、世界でも高く評価されております。今回も若い研究者の斬新な発想と、既成の概念にとらわれることなく積極果敢にチャレンジしていく柔軟な頭脳、独創性あふれる思考能力と力強い信念に感心いたしました。

また、研究を人間社会において役立つ製品として、さまざまな形で実現された研究者、開発者の創意工夫と情熱に、心より敬意を表します。

先端技術の研究開発は、私たちの安全や健康、衛生など、日常的な暮らしを根本から支えています。そしてわが国の平穏と平和を守ってくれるのも最新の科学技術ですので、明るい将来を築いていくためには、一見目立たない地道な研究開発の積み重ねに大いに投資していく必要がありましょう。

科学技術が目覚ましい進歩をし続ける現代において、先端技術の研究開発過程で得られるデータは、まさに人類の財産、知的資源であり、その質の高さは技術立国ニッポンの国力ともいえます。若者の理科・理系離れはいまだ懸念されているようですが、夢を現実のものにする科学技術の偉大さやあふれるロマンを、中学生や高校生にもぜひ伝えていただきたいと思います。

科学技術分野では解明を待つ研究領域がまだ数多くあり、科学技術が果たす役割は今後ますます大きくなって参ります。

私たち地球に生きるすべての生命体が、気候変動という大きな問題に直面しており、エネルギーの確保や自然災害への対策などに追われております。戦後私たちは、安全で豊かに暮らす幸せを当たり前のことと考えがちですが、テロ対策も含めて国民の平穏を守るには、科学技術は欠かせません。また、少子高齢化が進み、生産や介護、サービスなど人手不足が心配される中、ITや人工知能、ロボティクスの研究開発が解決の糸口となるでしょう。

ただ、科学技術の力をもって多くを変えることができますが、それがゆえにそれを実用するときの人間の資質が問われます。大惨事につながることも想定できますので、家庭や教育の現場、そして社会において、将来を背負って立つ若者をしっかりとした理念を持つ人間に育てていく責任があります。

ここにご出席の皆様には、将来を担う人材の育成とともに、そのような若者を育てる土壌としての国づくりに力を尽くしていただきたいと思います。

本日は、科学技術の素晴らしさに改めて思いを致す機会を頂き、ありがとうございました。皆様の研究がさらに充実、発展していくことを心より願い、また今後のご活躍を祈念して式典に寄せる言葉といたします。


高円宮妃久子さまを囲み、記念写真に納まる先端技術大賞の受賞者。前列左端は審査委員長を務めた阿部博之氏=28日、東京・元赤坂の明治記念館

授賞式 研究成果、新たな発展に意欲

文部科学大臣賞の岩根由彦さんから研究の説明を受けられる高円宮妃久子さま=28日、東京・元赤坂の明治記念館

この日の授賞式では、東京都医学総合研究所病院等連携研究センターの糸川昌成センター長が「ハイブリッドが育む科学の力」と題して記念講演し、「日本人はオリジナリティーがないといわれるが、周りから入ってきたものに工夫を加え、オリジナルのものを作る能力がある」と語った。

授賞式に続いて開かれた記念レセプションには約200人が出席。会場では研究成果を紹介したパネルが飾られ、高円宮妃久子さまは受賞者の説明に熱心に耳を傾けられた。

文部科学大臣賞を受賞した東京大大学院の岩根由彦さんは、23種類以上の基質アミノ酸からポリペプチド分子(ペプチドやタンパク質)が合成できることを発見した。久子さまは「人類にとって大変重要な研究をされていますね」とねぎらいのお言葉をかけられた。

フジサンケイビジネスアイ賞を受賞したのは、東レの高感度タンパク質検出システム。専門の検査機関に検査を依頼すると1週間ほど要していたのに対し、わずか数十分で検査結果が分かるようになるという。久子さまは「(検査機関から)遠く離れた病院や大規模災害発生時などには期待できそうですね」と、今後の展開に興味を示されていた。

抗菌性人工股関節の開発で特別賞を受賞した京セラメディカルは、水野浩彰さんが人工股関節の手術のうち1%で合併症が起きていることを説明。久子さまは「新たな科学技術がそうした課題の解決につながることを期待しています」と述べられた。

今回の受賞を励みとして、新たな飛躍を誓う声も相次いだ。

産経新聞社賞を受賞したがん研究会有明病院は、パソコンの動画を使えば切除する腫瘍が緑色で染められ、執刀医が確実に切除部位を把握できる技術が受賞の決め手となった。石沢武彰医学博士は「多くのがん患者を救うことにつなげたい」と意欲を示した。

物体指紋の認証技術で経済産業大臣賞を受賞したNEC(日本電気)の石山塁さんは「偽造品対策や安全の問題、生産性の向上といった領域で当たり前のように使われるようにしていきたい」と話していた。



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