第33回先端技術大賞授賞式 鷺宮製作所R&Dセンターの三屋氏ら表彰(2019/7/11 東京・元赤坂 明治記念館) 複合的視点で創造立国実現へ「第33回 独創性を拓く 先端技術大賞」授賞式後のレセプションで、経済産業大臣賞を受賞した鷺宮製作所の三屋裕幸さんから説明を受けられる高円宮妃久子さま=11日午後、東京・元赤坂の明治記念館 優れた研究成果を挙げた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者を表彰する、フジサンケイビジネスアイ主催の「第33回 独創性を拓(ひら)く 先端技術大賞」(後援・文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、ニッポン放送、産経新聞社)の授賞式が11日、高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。 先端技術大賞は科学技術創造立国の実現に向け、最先端技術の研究に励む若者の独創性を育み、勉学・研究への意欲を高めて世界のひのき舞台で活躍する人材を創出するのが狙い。 式典では、環境中で分解するイオン電解質を電源とする無線センサネットワークの研究に取り組んだ東京大学大学院の山田駿介さんに学生部門のグランプリに相当する「文部科学大臣賞」が、身の回りの微少振動を電力に変換する技術により、小規模自立電源の実用化を目指す研究開発で成果を上げた鷺宮製作所R&Dセンターなどには、社会人部門の最高賞「経済産業大臣賞」が、それぞれ贈られた。 このほか、原子力災害後の環境放射線被曝(ひばく)リスクや断線を自己修復する電気配線・設計原理など6件の研究も顕彰。各賞受賞者に賞状と副賞の研究奨励金が贈られた。 審査委員長を務めた日本工学アカデミー会長の阿部博之・東北大名誉教授は「特定の学問分野に当てはめることができない複合的な高水準の研究が数多くみられた。学生部門では、斬新な発想、ユニークな着想の研究、高度の内容の研究が目立った。社会人部門では、生活に関連している研究開発やエレクトロニクス、情報関連の技術が多くみられた」と講評した。 その上で、「科学技術は未来への夢を与えてくれるだけでなく、持続可能な人類社会の実現にとって、その発展は必要不可欠だ。科学技術を志す、特に若い研究者の皆さんが世界を舞台にさらに活躍されることを祈念する」と述べた。 ■高円宮妃久子さまのお言葉本日、「第33回 独創性を拓(ひら)く 先端技術大賞」の授賞式にあたり、皆さまとご一緒できますことを大変うれしく思います。このたび、受賞された皆さま、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。 科学技術が目覚ましい発展を続ける現代において、日本の独創的な先端技術の研究開発は、世界でも大変高く評価されており、私たちの安全や健康、衛生など日常的な暮らしを根本から支えています。そして、先端技術の研究開発過程で得られるデータは、まさに人類の財産、知的資源であり、その質の高さは「技術立国日本」の国力を示すものといえます。科学技術やイノベーションは、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」を達成するためにも重要な役割を果たすことになるでしょう。 今回も若い研究者の斬新な発想と、それを実現しようとする力強い信念、情熱を強く感じることができ、積極的にチャレンジしていく柔軟な頭脳と独創性あふれる思考能力に感心いたしました。また、社会に役立つ製品や技術をさまざまな形で実現される研究者、開発者の創意工夫に、心より敬意を表します。 先端技術の研究開発は、刻一刻と変化する世界情勢に的確に対応し、わが国を守り、明るい将来を築く上で非常に重要であり、一見目立たない、地道な研究開発の積み重ねに、大いに投資していく必要がありましょう。 戦後、私たちは安全で豊かに暮らす幸せを当たり前のことと考え、平和な時代を享受してきましたが、諸外国と日本の関係は「力関係」あっての「友好関係」であるということをしっかりと理解する必要があります。友好関係を保つためには常に努力が必要で、世界平和や国民の平安を守るには科学技術を欠かすことができません。 科学技術分野では解明を待つ研究領域がまだ数多くあり、若い方々の独創性あふれる研究に期待したいと思います。 科学技術の研究開発は大変重要なだけに、それを実用するときの人間の資質が問われます。大学や研究機関、企業をはじめ、本日、ここにご列席の皆さまには、家庭や教育の現場、そして社会において、将来を担う人材の育成とともに、しっかりとした理念を持つ人間に育てていただくようお願い申し上げます。 本日は、科学技術の素晴らしさに改めて思いを致す機会をいただきまして、誠にありがとうございました。皆さまの研究がさらに充実、発展していくことを心より願い、今後のご活躍を期待いたしまして式典に寄せる言葉といたします。おめでとうございます。 次代担う若者に大きな励み芦立訓・文部科学審議官(中央)から文部科学大臣賞の賞状を授与される東京大学大学院の山田駿介さん=11日午前、東京・元赤坂の明治記念館 授賞式では、理化学研究所創発物性科学研究センターの樽茶清悟副センター長が、世界中で開発が進む量子コンピューターについての記念講演を行った。樽茶氏は高速で演算できる仕組みなどを解説した後、「量子コンピューターによって新たな情報処理技術が確立され、基礎科学の研究に新たな扉を開く」と指摘。「近い将来、世の中に出るときを若い研究者とともに楽しみに待ちたい」と話した。 授賞式に続いて開かれたレセプションには約200人が出席した。会場には研究成果を紹介したパネルが飾られ、高円宮妃久子さまは受賞者の説明に熱心に耳を傾けられた。 文部科学大臣賞を受賞した東京大学大学院の山田駿介さんと、経済産業大臣賞の鷺宮製作所の三屋裕幸さん。2人とも2013〜14年、東大生産技術研究所にあった藤田研究室(当時)に在籍していた。 当時の指導教官だった東京都市大学総合研究所の藤田博之教授もお祝いに駆けつけた。藤田教授は2人について、「山田さんはアイデアが豊富ですぐに実験を繰り返すなど探求心が旺盛だった。三屋さんは企業の研究者らしく、社会実装に至りやすい研究テーマの見つけ方などを学生たちに教えていたのが印象に残っている」と話していた。 同じ研究室から2人が同時受賞したことについて、藤田教授は「大学は人を育てるところと考えており、こうしたかたちで成果が認められたことはうれしい。次を担う若い研究者に大きな励みになる」と目を細めながら語った。
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